さて、今回はいよいよ最終回!
現在メインでお使いのストラトタイプモデルのお話から、遙か別次元の「本質」へと飛躍してゆく!


ESP:さて、ECLIPSEとは別に、現在ではストラトタイプを多くご使用ですが、この辺の心境の変化というのは?

SUGIZO:ストラトに移行した理由は、今の求めるサウンドがフロイドローズの音と合わないこと。それと昔からストラトが好きで、それを基準にECLIPSEを進化させていったでしょ。で、途中でジャガーにハマってLUNA SEA時代はほとんどジャガーの恩恵を受けていた。あの当時はジャガーじゃないと、あのアクとか荒さってものが出せなかったんです。ストラトだとサラッとしちゃう。
でも、ジャガーのあの感覚を知り尽くしたら、ストラトでもあの荒さが出せるようになったんですよね。

ESP:すごいレベルの話に突入してますね。

SUGIZO:ストラトってたぶん全ギターの中で、最も全方位をカバーできる楽器なんです。タッチによって、プレイヤーの資質によってね。そこまでまだわからないと、いわゆるストラトらしいサウンドしか出せないんですけど。でも深く知れば知るほど、ほんとに多くのサウンドバリエーションを出してくれるんですよね。だから、今はストラトで、ジャガーに聞き間違えちゃうようなことも弾けるようになったんですよ。
でも、ストラトらしいキレイさも出せるし。あともうひとつ、ジャガーでどうしても難点だったのが、アームユニットですよね。やっぱりシンクロを使いたかったんです。だからSeymour Duncanで作ってもらったジャガーにはシンクロを付けてもらいましたね。
で、結局最終的にストラトに帰ってきたのは、自分のタッチがストラトを初めてコントロール出来るようになったから。それに気づいたのが、LUNA SEAの最後の年だね。
で、あのリバースストラトが登場して。(ESP注:Seymour Duncan DS-280-RV。現在は生産完了)ストラトの本来の伸びと、本来の美しさ。これに、ジャガーが持っていたあの荒さ、よじれ感。同時にミックス出来るようになってきたんで。ストラトって、プレイヤーの資質が裸になって出てくるギターなんですよ。
あとピックアップはシングルコイルが好きなんですけど、やっぱり最もタッチがリアルに出るんですね。使い方によってはものすごくエッジーにもなるし、異常に凶暴にもなるし、実はものすごく太い音もする。ハムバッキングをめったに使わないのは、あれは実は太い音に聞こえているだけだと思うんですよね。本当は「芯」はそれほど存在してなくて。
だからクオリティの高いシングルの素晴らしいのは、もっとも凶暴に、もっとも太く、もっともツヤっぽくもなる。そこに気づくまで20年近くかかりましたけどね(笑)

ESP:そうやってあらゆる試行錯誤を経て来たからこそ、の結論なんでしょうね。ちなみに弦のゲージを教えていただけますでしょうか。

進士:レギュラーチューニングは10-52のセット。1音下げは11-52のセットになってますね。

ESP:結構太いですよね?

SUGIZO:そうですかね?前はもっと太いゲージを使ってたんですけどね。

進士:最近、一段細くしたんですよね。

SUGIZO:ちょっとギターがかわいそうになってきてね(苦笑)基本的にはヘヴィーなゲージが好きですね。

ESP:ではテンションは硬めの方がお好きなんですね?

SUGIZO:そうですね。これ以上太くしていくと、3弦がもう巻き弦になってしまうので。それはちょっと避けたいんです。

進士:実はもうちょっと太いプレーン弦も試したんですけど、ハイフレットでは音がちょっと詰まる感じになっちゃったんですよね。3弦の.018、これくらいがプレーン弦の限界かな、と(笑)

ESP:ピックアップポジションってどこがお好きですか?ハーフトーンとかってお使いになられます?

SUGIZO:ハーフトーンは今はほとんど使わないですね。

ESP:やっぱりリアですか?

SUGIZO:リアもほとんど使わない。フロント、とセンター。

ESP:えっ!あの音ってフロントとセンターしか使ってないんですか!

SUGIZO:ジャガーのときは、リアとフロントのハーフトーンは使いますけど。今はほとんどフロント。

ESP:ちなみにソロは?

SUGIZO:ソロは99%フロント。フロントでもエッジーな音が出せるようになってきたんですよ。

ESP:・・・すごい!

SUGIZO:もうリアがいらないって言ってもいいくらい(笑)たまーに、チャキチャキのを弾くときにリアって感じです。リアはもう、飛び道具として使いますね。

ESP:飛び道具なんですかっ(笑)

SUGIZO:たぶん普通の人がフロントで弾いたら、こもった音になっちゃうかもしれないけど、タッチでツヤを出すんです。

ESP:すべてはタッチなんですか?

SUGIZO:弦も全然替えないんですよ。平気で1年とか張りっぱなしですよ。

ESP:ほんとですか?

SUGIZO:うん。

進士:昔はかなりマメに替えてたんですよ。最近は、むしろ替えない弦の響きが好みらしくて。

SUGIZO:弦がほんとに死んじゃったらどうしようもないけど。1年くらい平気で替えないでレコーディングもやりますよ。

ESP:新しい弦って、キランキランした感じになりますよね。

SUGIZO:あのまやかしのツヤがキライ。あれは本当の音じゃないです。で、本当の音に落ち着いたくらいでみんな「弦が死んだ!」っていって替えたがる(笑)
それも、指でツヤを出す。だからこの弦でも全然ツヤのある音が出ますよ。(と、今弾いているN-ST300Rの弦を指す)
今ちょっと6弦がだいぶキてるんですけど、アンプを通すと意外と平気だったりするんですよ。

ESP:本当に貴重なお話を聞かせていただきました。では最後に、SUGIZOさんにとってギターをプレイする上で、最も大事だと思うことは何ですか?

SUGIZO:うーん。

・・・・・フィジカル面で言うと、とにかくセックスをしまくる。

ESP:・・・・・・

SUGIZO:本当ですよ。パートナーをどこまで喜ばせてあげれるか、同時にどこまで自分が高みへ到達できるか。
これ、楽器と全く同じで。楽器はやっぱり1本1本鳴るポイントがあるんですよ。
ホントにね、タッチが最も大事。どんなに上手に楽器を弾く人でも、「音悪いなー」って思う人は、全然オレにはこないし。結果として残らないと思う。
やっぱりジェフベックが、そしてオレはもちろん生で見たことないけどジミヘンが、なぜあれだけ素晴らしいかっていうと、やっぱりサウンドだと思う。タッチだと思うんですよね。

たぶん、ものすっげえジミヘンってイヤラシかったと思うよ(笑)ザッパもそうだったと思う。
だから女の子が気持ちいいと言ってくれることと、ギターが気持ちよく鳴ることは実は同じで、そこの「秘伝」を見つけること。ある程度わかっちゃえば、どの楽器を持っても気持いいって楽器は言ってくれる。弦が新しくても古くても。

いかに速く弾くかとか、いかに正確に弾くかとか、それはやってりゃついてくるから。

例えば50年間セックスをしてきたとしても、残念ながら女の子に気持ちいいって言ってもらえない男の人もいると思うんだよね。楽器も同じなんだよ。どうすれば相手が気持ちいいって言ってくれるのか、どうすれば自分が最高に気持ちよくなれるのか、全神経で取り組むことだね。
ギタリストだけじゃなく、全ての楽器のプレイヤーに言えることなんだけど、プレイしてるのを見ると「ああ、この人はこういうセックスするんだろうな」ってだいたいわかっちゃいますね(笑)

ESP:・・・・・スゴい!!・・・・・スゴすぎます。

SUGIZO:本当ですよ。ギターにもG-Spotがあるんですよ。そこにちゃんと自分が入れるかっていう。

進士:いやあ・・・すごい話ですねえ。

SUGIZO:それは本質だと自信をもって言えますね。20年やってきてわかることですね。イケイケの子は、ただ強くガムシャラに行くだけ。自信がない子はただおそるおそる触ってるだけ。メリハリもなにもあったもんじゃない。じつはそこがメチャクチャ重要なこと。楽器も女の子も喜ぶポイントだと思う。逆に女の子プレイヤーの場合は、男を喜ばせることね。男にとってこんなにありがたいことはない。ね?

あとメンタル的なところで言うと、オレがたまたまラッキーだったのが、自分が憧れるギタリストがいなかったこと。それは今思えばすごいラッキーなことだったと思う。当時は結構困ったけど(笑)
オレはずっと同じことをしているのはあまり好きじゃないし。常になにか自分が新鮮だと思うこと、新しいと思うこと、それがクールだと思ってやってきたから。その精神性は時にはすごく孤独だけど。だってみんなと同じことやってる方が安心するよね?

でもオレは残念ながらそうじゃなかった。

でもギター弾きってのはそういう人が多くていいと思うんですよ。

ESP:なるほど。

SUGIZO:しかしながら、バンドやるには協調性も大事だと思う。
例えばこういう人よくいるよね、一人でバーッて弾いてるときはホントに上手くて、いろんなスケール知っててね、スゴイ上手い人なんだけど、バンドで一緒にゴン!って合わせると、からっきしだったりする人。全然一緒にグルーヴ出来ない。人の音を聞かない人、マスターベーションの人。

もう本当にセックスと同じ。自分一人でどんどんイッちゃって(笑)相手とのシンクロをおそらく考えないんだと思う。

だからバンドはね、協調性がごい大事。

だけど、ギタリストたるもの、協調性だけだとつまらん。

ESP:おお!!

SUGIZO:そこをブチ抜く、風穴をブチ抜く、異質性がないと。

・・・全然具体的な参考になってないかもしれないけど(笑)

ESP:とんでもないです!ものすごい奥の深いお話で、僕は衝撃を受けました!

SUGIZO:マジ?(笑)

ESP:右手がどうの、左手がどうの、というありきたりな答えを予想していた自分がお恥ずかしいです(涙)

SUGIZO:そんなのやりゃあ出来るようになりますからね。出来ないってのはそれやってないだけですよね。
オレだって出来ないこといっぱいあるから、いつもトレーニングしなきゃって思ってます。
逆にいうとね、テクニックはボキャブラリーとして非常に大事だと思う。
オレもより多くのテクニック、コードワーク、スケールワークをもっともっと身につけたいって思ってます。
まだ赤子同然ですよオレも。あ、でも赤子は通り過ぎたかな。20年やって、やっとよちよち歩きですよ(笑)

ESP:マジですかっ!!SUGIZOさんでもよちよち歩きって・・・。ボクたちは一体どうしたらいいんでしょう・・・?(涙)

SUGIZO:このペースの遅さに、いつもヘコんでるんですよ。
20年前にね、「ギターを一生やっていくぞ!」って自分で誓いをたてたときにね、20年後、もっと高いレベルに行ってると思ってたんだけど。
だから最近ほんとにイチから叩き直しだ!って思ってるところなんですよ。

ESP:・・・・・

SUGIZO:やってもやっても辿り着かないから。これはもう永遠に続く旅ですよね。

ESP:一日にだいたいどれくらいギター触ってるんですか?

SUGIZO:触らないときは2週間くらい触らないときもありますよ。でも触るときはそれこそベッドでも一緒にいるときもある(笑)
ギターに触るっていう実際フィジカル的な部分じゃなくて、イメージ、音楽的方向性というか、想像というもので自分を導くことも必要なんですよ。そのバランス。
逆にずーっとギターばっかり弾いてると、おそらく指板上でしか物事を考えられなくなりますよね。
テクニックが上手いということと、音楽的想像力とか、音楽性における広がり、魅力、そしてバンドとのグルーヴっていうのは全然別問題。ただ上手ければいいっていうわけではないってことですね。

ESP:是非このお話を、ESPのホームページを見ているギタリストたちに読んでもらいたいです!!

SUGIZO:いい話でしょ?「セックスしまくれ!」って言ってるんだから(笑)

本当に重要なことは相手を喜ばせてあげるっていうことだよ。
愛のあるセックスって、相手がイッちゃうと、自分もそれで気持ちよくなっちゃうでしょ?。

そういうことなんですよね。

ESP:本日はお忙しいところ、大変貴重なお話を聞かせていただきました!
どうもありがとうございました。



インタビューは終始和やかな雰囲気で、SUGIZO氏は絶えずギターを弾きながら、丁寧に言葉を選んで答えてくださった。それにしても、やはり見ている視点が違うというか、とにかくこちらの想像を遙かに超えた、次元を超越した深いお話に、聞き手として、ただただ驚愕するばかりであった。しかし、ギタリストならばきっと誰もが納得できるお話ではないだろうか?
ものの本質というものを見抜くSUGIZO氏の研ぎ澄まされた感性に、ただただ驚かされるばかりである。

(Text by Akihiro Sasaki / ESP)



 


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※1. 「ストラト」は米国Fender Musical Instruments Corp.の登録商標Stratocasterの愛称です。
※2. 「ジャガー」は米国Fender Musical Instruments Corp.の登録商標Jaguarのことです。



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