2006年3月24日、渋谷O-EAST。
本日の公演をもってThe FLAREはプロジェクト終了となる。文字通りのラストステージである。
先日行ったインタビューでは、「ラストライブはあまり感傷的な感じにならないと思う」と語っていた二人だが、2階席まで超満員となった会場に漂う熱気は、やはり独特の緊張感を帯びていた。
会場に集まったオーディエンスは、The FLAREが放つ最後の光をこの目に焼き付けようと固唾をのんで開演を待ちわびているのだ。

幻想的なSEからついにメンバーが登場した瞬間、会場はなんとも表現のしようのない複雑な大歓声に包まれた。それはやっとメンバーがステージに出てきてくれたという歓喜と、このステージで本当にプロジェクトが終了してしまうのだという寂しさが折り混じっている大歓声のように感じられた。
SUGIZOはNavigatorのN-ST-300のホワイトフィニッシュを手に取り、おもむろにギターを吠えさせる。
誰が聞いても一発でSUGIZOの音とわかる、独特のスペイシーなロングディレイが会場を引き裂く。
そして一曲目の「INNER CHILD」へとなだれ込む!
SUGIZOはワイアレスでなくシールドを使用。耳につきささるような高域、それでいて絶妙に艶っぽい中域。SUGIZOならではのトーンがダイレクトに伝わってくる。
そしてYUNAの優しく伸びやかな歌声が会場に響き渡る。
二人を支えるサポートギタリストのCHARLIE、JAH-RAHとかわいしのぶのリズム隊も鉄壁だ!
この曲こそ、The FLAREの全てが凝縮した一曲と言えるだろう。
そして2曲目、BASSのかわいしのぶのスラッピングから「傀儡」へとなだれ込む!
会場はバンドがはじき出すタイトなグルーヴを全身で受け止めている。
続く「無くしてきたもの」で、SUGIZOはP-90を搭載したNavigator N-ST-300のブラックフィニッシュを手に取り、オクターブ&ワウを使ったアグレッシヴなプレイを炸裂させる。P-90ならではの、芯のあるふくよかな中域を堪能させてくれた。
会場も一気にコブシを突き上げまくりのスゴイことになっている!
さらにドラムフィルインから「Don't forget you〜I'll never and ever〜」。
SUGIZOはP-90搭載のN-STでひたすら太く、かつエッジーなトーンを聞かせてくれた。
そして「HAD A DAD」ではYUNAはステージ下手へ、SUGIZOは上手へと展開。会場をアオリまくる!

SUGIZOによってカスタマイズされたNavigator N-ST-300ホワイトフィニッシュ。オープニングから大活躍した。


スタンバイして出番を待っているギターたち。

Navigator N-ST-300のブラックフィニッシュはレリック加工が施されている。クラック具合も絶妙だ。

YUNAのMCをはさみ、披露されたのは「My Fragile Girl」だ。
もうイントロのSUGIZOのソロのトーンからして鳥肌モノだ!
凄まじい倍音を含んだトーンは会場の空気を一瞬にして切り裂き、耳に食い込んでくる。
「真夏ノ恋人」では、会場は大ジャンプの嵐となり、大盛り上がりを見せている!
この曲は本当にライヴ映えする最高のポップチューンだ!
続く「巡り逢えるなら」では、Navigator N-ST-300のカスタムペイントモデル、通称:ジョージが登場!
渋いクリーントーンから、フロントPUを使った絶品ソロまで、凄まじく太いトーンを披露。
SUGIZOは曲によって頻繁にギターをチェンジするので、各ギターの特色がとてもわかりやすいのだが、このジョージモデルは特に太く艶のあるトーンを弾き出していたのが印象的だった。
SUGIZOのカッティングからスタートする「LYRA」では、さらに絶品トーンが炸裂!
PUポジションはフロントなのが全く信じられない。PUセレクターはインタビューでも語っていた通り、フロントとセンターしか使っていないようだ。
通常フロントでは、もっとこもった音になるはずである。すべてはSUGIZOのタッチが生み出すトーンなのだ。
ここでSUGIZOはTEUFFEL GUITARを手に取り、「Sunday Morning」が始まった。
CHARLIEはガットギターを、かわいしのぶはベルリラをはじめ可愛らしいパーカッションワークでさらに演奏を盛り上げる。
SUGIZOは再びNavigator N-ST-300のブラックフィニッシュを手に取り、エフェクティヴなジャムセッションから「SPIRITUAL GROWTH」のリフ!!会場はもう大合唱となっている!
アグレッシヴなバースからなだれ込むコーラスではSUGIZO独特のあのFlangerサウンドをバックに、YUNAが天へ駆け上るかのような素晴らしい歌声を聞かせてくれた。
続く「VOICE」で、NavigatorのP-90搭載ジャガーPrototypeが登場。STタイプとはまたひと味違う、独特のアクのあるサウンドが特徴だ。
そしてU2の「Sunday Bloody Sunday」のカバーへとなだれ込んだ。
YUNAの「一緒に愛の祈りを叫んでください」というMCから「ウエティコ」が。
ラップ部分は会場も大合唱となり巨大なエネルギーが会場を包み込む。SUGIZOはジョージに持ち替え、素晴らしいギターソロを聞かせてくれた。
そして始まった「FORGIVE」!
会場は「まだまだ行けるぞ!」とばかりにものすごい勢いの大ジャンプ大会!
SUGIZOは下手へと展開し、会場をさらにアオリまくる!
そしてSUGIZOはジョージからNavigator黒ジャガーへとギターをチェンジし、「Free Your Mind」が!
イントロのブレイク部ではYUNAがオフマイクで「行くぞ!」と叫び、待ってましたとばかりに暴れ出す会場!
ラストステージということで、これまで若干固くなっていた印象のある会場であったが、この曲を起爆剤として壮絶なエネルギーをステージに送り出し、間違いなく今夜のクライマックスと言える圧巻の盛り上がりだった。
そして本編ラストでSUGIZOは再びジョージを手に取り、「STAR LIGHT」のイントロを奏で始めた。
祈るようにして歌い上げるYUNAと、凄まじい倍音を含んだトーンでソロを弾くSUGIZO。
鳴りやまないフィードバックがいつまでも会場に響き渡り、圧巻のうちに本編が終了した。



アンコールを求める会場からは「昨日見た夢〜平和の誓い〜」のメロディが自然発生!
その大アンコールに応えてメンバーが出てきてくれた!
YUNAはアコギを手に取り、「LIFE」が披露された。
SUGIZOはトレモロを奏でながらコーラスを取り、アウトロではE-BOWを使ってロングサスティンのソウルフルなソロを聞かせてくれた。
そして、SUGIZOはジョージに持ち替え「Positivity」!!
バース部ではSUGIZOはアンプキャビネットの前でフィードバックを得ている。
バンドの強力な演奏を受け、上手、下手へと歌いながらかけまわるYUNA。
ソロではSUGIZO、YUNA、CHARLIEがセンターへ集結し、SUGIZOがアーミングを使ってアヴァンギャルドなソロを披露。
もはや言葉にできない、あらゆるものを包み込んでしまうようなポジティヴなエネルギーを会場にブチかましてくれた!

それでもまだ終わって欲しくない!
という会場からはさらなるアンコールを求める声が!
それに応えてアンコール2では「みんななりのやり方で、愛を伝えて行ってくたさい」というYUNAのMCから「昨日見た夢〜平和の誓い〜」が演奏された。
大手拍子と大合唱で会場がひとつになり、まさに"Love & Peace"そのものだ!
本当に感動的なしめくくりとなった。

しかしまだ帰ることが出来ない会場は、あと一回だけ、とステージへ祈り続けた。
そして本当に最後のアンコールとして、二人はThe FLAREとしてのラストソング、「INNER CHILD」をもう一度プレゼントしてくれた。そして、この曲を持って、The FLAREはすべてのプロジェクトを終了した。

期待と不安に包まれ開演したラストステージであったが、終わってみればThe FLAREが放つポジティヴな光に導かれ、メンバーとファンが一体となって駆け上がって行った感動的なライヴとなった。
終演後のステージ上の自信に満ちたSUGIZOとYUNAの笑顔が、その全てを物語っていた。

(Text by Akihiro Sasaki / ESP)

上手にはパワーブックが設置され、バンドと同期するPRO TOOLSのコントロールをSUGIZO自身が行っていた。



Navigator N-ST-300をもとにカスタマイズされたモデル。左が通称:ジョージ。右は通称:ホワイト。ピックアップはともにSeymour Duncan ANTIQUITY II Surferを搭載。

左がNavigator N-ST-300にP-90を搭載したモデル。右がP-90を搭載し、シンクロトレモロ仕様のジャガータイプのPrototypeモデル。


先日のGuitar Magazine誌でも登場したTEUFFEL GUITAR。今話題のドイツのカスタムブランド。

今回のアンプはFenderのPro SonicとTone Master。出来るだけ原音を損なうことなく出力されるようにワイアリングされている。


SUGIZOの足下。おなじみのワーミーペダル、ワウペダル、そしてヴォリュームペダルが見える。

CUSTOM AUDIOのRS-616を中心としたシステム。アンプヘッドとMIDIとエフェクトループを一括管理している。

Special Thanks to Tadayuki Tsuji (TEAM ACTIVE)

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