ギターマガジン300号記念オリジナルギターを弊社が製作する事になりました。詳しくはギターマガジン2003年4月号から3ヶ月にわたって誌面でご覧になれますが、誌面ではお伝えできないもう少し細かい部分をここではお伝えしていきたいと思います。
第二回 木工製作〜木地確認 その1
(ギターマガジン誌 2003年5月号掲載)


弦楽器である以上、弦が張れなくては意味がありません。その弦を張る部分の殆どを占めているのはネックです。そしてネックこそギターの命であると考えます。つまり、ネックがしっかりしていないギターはまともに弾く事すら出来ないからです。ネックを製作するには細心の注意と確かな技術力を必要とします。まさに職人の腕が問われるのです。
また、ギターの演奏性を決定付ける大きな要因でもあります。スケール、指板R、フレット、グリップシェイプ・・・。フルオーダーメイドだからこそ自分の手に合ったネックが製作可能なのです。
今回の300号記念ギターは読者プレゼントと言う事で、グリップシェイプは至って普通なUシェイプを採用しました。
使用するメイプル3ピース材とパーフェロー指板。まだこの状態ではただの板と角材でしかありません。ここからスタートです。 特殊なカッターで指板にR(曲面)をつけていきます。大きな刃が剥き出しなので気を抜くと大怪我に繋がる危険な機械です。 右が最初の板の状態で、左がRをつけたものです。その違いが分かるでしょうか。
Rのついた指板にフレット溝を切る専用のフレッティングマシーン。使用するスケールのフレット間隔で丸鋸の刃が飛び出ています。 粗加工の終わったネック材。この時点でヘッドの角度や大まかなネックグリップの長さが決まります。 ヘッド部の足りない部分をこの段階で足しておきます。この作業は「耳ハギ」と呼ばれています。
ヘッド上面を平らに整形してコリーナの薄板を接着します。この時点で既にトラスロッドが仕込まれる溝は掘られています。 ロッドアジャスト部(六角レンチでが入り、調整を行う部分)を掘ります。 トラスロッドとそれを埋める埋め木です。トラスロッドのエンド部分が入るザグリも既に掘られています。後はトラスロッドを仕込むだけ。
ネックグリップを大まかに削りだします。この作業にはピンルーターという機械を使用します。この段階でネックグリップの70%は完成してしまいます。 ヘッド形状を書き込み、さらにはペグ穴の位置も書き込みます。次にペグの取り付け穴をボール盤を使って空けていきます。 ヘッド形状を書き写す時に使ったアクリルの治具をガイドにしてヘッド形状を削りだします。ここで使用している機械もピンルーター。
指板にインレイ(象嵌)を入れる作業です。入れる物と同じ形のザグリを指板に掘ります。深さは約2ミリ。接着にはエポキシ系接着剤に指板と同じ材質の木の粉を混ぜた物を使います。 見事指板に収まったインレイ。隙間なく埋めるのは非常に高度な技術が必要とされます。この後いよいよ指板とネックが接着されるわけです。 あて木とクランプを使用して指板とネック材を隙間なくしっかりと確実に接着します。
エコノミーザンダーでヘッドからネックにかけてとヒール部の加工を行います。また、ネックグリップ部の細かい加工もこの時に同時に行われます。この段階でネックグリップの90%は完成します。 ネックが殆ど完成したところでフレットを打ち込みます。フレットは通常ワイヤー状の物ですが、それを各フレットの長さにあわせて切って使用します。 ヘッドからネックにかけての微妙な曲線もご覧の通り。このギターにはヘッド付け根の強度を稼ぐ為にボリュートがあります。