
「音楽やってると楽しいんで、それが一番ですよ。何よりもねっ!」
超過密スケジュールの中、何本ものドラマ撮影と平行して連日朝までトラックダウンしている京本氏から発せられたこの一言。
この一言こそが、もう全てを物語っていると言っても過言ではないであろう。
そしてインタビューは続く!
京本政樹:でね、やっぱり年の功とはよく言ったもんで、それなりに十年二十年と音楽やってきているわけじゃないですか。
それなりに蓄積したものもあると思いますし、知識も豊富になってきてますしね。
いいものを作れてるんじゃないかなあっていう自信もありますよね(微笑)
でも、当時を否定しているわけでは全然なくて、あれはあれでね、荒削りな良さっていうのも当然あるわけで。
だから今回だったら、歌入れなんかも、「たったひとつのLove -I Can't Let You Go-」とか「香りが消えた夜」とかはあいかわらず1本しか録ってないし笑。全部一発オッケーでね。
それはこないだの「I LOVE YOU」と同じで、もう荒削りだから逆にそこがいいやって。
多少、音がひっくりかえってようがなにしようが、バンドと一緒にやった一発録りが一番いいっていうことで。
でも他のもの、たとえば「牙狼」とかは、すごく緻密だったりするわけですよ。
で、「薄桜記」なんかはどんどん上昇気流に乗っていっちゃって、っていうことで、アルバムが余計バラバラになるんですよね笑。
「香りが消えた夜」なんてのは、朝の6時くらいに歌ってるんですよ。
あれ一日で6曲、歌を録ったんですよ。だから、声も完璧枯れてますし。
でもね、本来だったら、「たったひとつのLove -I Can't Let You Go-」と「香りが消えた夜」みたいのを集めて、一枚のアルバムですよね。
もうライブアルバムみたいな感じでね。まったくライブですもん。
NOAなんて「ウワァオォ〜!」なんてやっちゃってるんだけども、
「もういい!全然いい!どんどんやっちゃっていいから!」っていうあの感じで一枚とかね笑。
でもこういう現場にいるっていのは、いろんなアイディアがね、逆に浮かぶ場所でね現場っていうのは。
特に音楽って合作作業でしょ?自分が作ってきた物をモチーフにね、ドラマーがいたり、ベースの人がいて、アレンジャーがいて、いろんなアイディアをみんなが持ち寄って、だんだん自分の絵がふくらんでくるっていう、そのふくらんでくる過程をみながら、自分のアイディアがさらにふくらんでくるってのが面白いでしょ?
あと、いろんな現場をやってきて、ファンの人によく言われるんですよ。京本さんてやっぱり「生」がいいですよねって。
それはそうなんですよ。どうしてもモチベーションがね、録音したものを切り刻んでどうだこうだってやるよりは、自分のテンションで勝負してる方が、要するに「生の立ち回り」の方が、「編集された立ち回り」よりも、絶対にいいんだろうなって思ったりとか。
それはそれでCDの嵯峨の部分ですから。
そういう意味で、臨機応変なやりかたっていうのかな。
そういうのはこれまで10何枚のアルバムを出していることを含めて感じてる部分なんでね。
今回のアルバムはそういう意味で、去年の「苦悩〜Peine~」とは全然違いますよね。
「苦悩」はライブ的なアルバムを目指したというか、むしろ「ライブで再現できる音楽を」っていうのを大谷さんとの合い言葉にしてたんで。
だから、コンピューターも入れてないしね。
今回はそっからさらに上に行った感じで、ライブで再現できるものも入りつつ、絶対再現不可能なものも入って来ちゃってるんで、まあ集大成と言ってもいいんじゃないかなって思います。
「ロンリーハート」とか壮大な弦(ESP注:ストリングスのこと)が入ってるっていうのは、やっぱりすごい良さがあって。なおかつ打ち込みには打ち込みのすごい良さがあって、面白いですよ。やっぱどっちもどっちなんですよね。
弦も暖かみあるしね。だから、打ち込みに入ってくる生ガットとか好きなんですよね。
さっきの「かげろうの街II」のあのパートみたいに、ああいうギターのアルペジオとか大好きなんですよ。
(ESP注:つい先程まで、「かげろうの街II」をトラックダウンしていたのだが、京本氏はイントロのギターのアルペジオパートが他の楽器に埋もれてしまって聞き取りにくくなっている点をエンジニアの石井氏に指摘。石井氏としては全体のバランスを見つつ、適正な音量にしていたつもりだったのだが、京本氏は他のパートのレベルは下げても構わないので、どうしてもそのアルペジオを上げて欲しいとリクエストしていた)
ESP:あれを5デシベル上げてくださいって言ってましたもんね。
京本政樹:そうんですよ。あれを上げることによって、サウンドに暖かみが出るんです。
ESP:あそこに、京本さんのこだわりを見ましたよ。
京本政樹:あれが聞こえないとどうしようもないんですよ苦笑。
ESP:まさにシンガーソングライターということで、曲を作詞作曲して歌っている方ならではのリクエストっていう気がしました。
京本政樹:実は僕がデモテープ作ってるときに、すでにあのパートは入ってたんですよね。
あそこはこだわりの場所、っていうか曲の要なんですよ。
ESP:そういえば、今回の新曲もギターで作曲なさったんですか?
京本政樹:そう。あのオヤジの形見のガットですべて作曲しました。
と、ここで機材トラブル発生。PROTOOLSの何かのデーターが飛んだらしい。
京本政樹:なんか毎日一曲は必ずなんかトラブルあるんですよね。
今回のレコーディングは通常の倍とはいわないけど、すごい労力かかってますよね。
機材トラブルに悩まされてます。
いつも思うことなんですが、僕がミュージシャンだけやってられたらなって思うときがあるんですよ。
ずっと半年間スタジオ入ってればいいんだもん。ずっとこもってればいいでしょ?うらやましいなって思います。
でもそれは僕、どうしてもできないでしょ?(苦笑)
今回はたまたま自分のスケジュールがこういうスケジュールだったんでね。
いつもだったら、ビクター時代、ポリドール時代もそうだったんですけど、一週間なら一週間って決めてやるんですよ。
その間、あんまり俳優業もそんなにかけもちしないで。
でも今回は作る方のスケジュールよりも、役者のスケジュールの方が先に決まっちゃってたんで、それに合わせて、三日飛ばしくらいのかたちでやってたんです。
そうすると何がおこるかっていうと、トラックダウンっていうものが終わって、新幹線とか飛行機で移動している最中に聞くわけですよ。
で、そのときに、曲の大事なポイントが抜けてるっていうのに気が付いてしまうわけです。
でも、それトラックダウンが終わってたら修正するのはほとんど不可能なんですけどね。
でもそれをとにかく、プロデューサーとエンジニアさんに電話を入れて。
「どうしてもだめなんです」と。
「え?何がですか?」っていうね笑。
やっぱりこういう状況で朝7時とかまでずっとやってたら、耳がマヒしてしまうっていうところもあるんですよ。
そんときに、もう聞こえてないですよ。
いいと思ったのになあって。
でも、移動中とかホテルの部屋で聞き直して、あれ?って思って。
で、どうしてもやり直したいっていうわがままを言わせていただきまして、今回も二日くらいスケジュールが延びちゃってるんですよね。
マネージャーに無理矢理スケジュールをもらって。取材とかをずらしてもらってね。
実は今日も本当はないはずなんですよ笑。
でも、どうしてもやりなおしたかったから。
贅沢を言わせてもらえるなら、あと、半年あればねえ。もっとすごい作品作れるよね。。。
でも今までのボクの人生でそういう時期って、一回もなかったんです。
音楽だけやってなさい、役者だけやってなさいっていう、どっちかだけやってればいい、っていう恵まれた環境はこれまで一回もなかったんですよね微笑。
だから、その日、その日の真剣勝負しかないんですよね。
ESP:頭の切り替えとか、大変じゃないですか?
京本政樹:結局、それもあって、昔は音楽を投げ出しちゃったのもあるんだけどね(苦笑)
今はなんとかね。いろいろ経験してきたわけですから。
昔は、だって現代劇から時代劇に行くだけで、もうダメだったんで。
やっぱり経験だよね。物事はね。
でもね。応援してくださっているファンの方は本当に有り難いんですけれども、音楽やってると役者やってくれって言われますし笑、現代劇やってると時代劇やってくれって言われますし・・・笑。
もうね笑。求めていただくのはすごく嬉しいんだけども、なんせ体がひとつしかないもんですから笑。
一人十役くらいやってるわけでね笑。
ESP:・・・たまに、自分が5〜6人欲しいとか思いませんか?笑。
京本政樹:そうそうそう笑。思う思う笑。
まさに一人十役、いやそれ以上の多種多様な幅広い分野のお仕事をなさっている京本氏。
「その日、その日の真剣勝負しかないんですよね。」
という、さりげなく発せられたこのお言葉に、とてつもない重みを感じた。
京本氏の作品づくりにかける情熱。
今回のレコーディングにおいても、本当に限られた時間の中で、一切妥協することなく真剣勝負が繰り広げられた。
残念ながら、俳優業その他でひっぱりだこの京本氏が音楽にだけ専念できる環境というものは、おそらくこれからもないであろう。
しかし、本当に時間のない中で、それを決して言い訳にするのではなく、その逆境をものすごいエネルギーに変えて「一日一日の真剣勝負!」で最高のものを作りたい、という京本氏の情熱に圧倒されてしまった。
そして京本氏の情熱にどこまでも応えようとするスタッフ達!!
チーム京本、おそるべしである!!
さて、いよいよ次回はアルバムインタビューの最終回!
次回のインタビューを読めば、もうアルバムを聞きたくて仕方なること間違いなし!
もんどりうって震えて待て!