ついに一人歩きを始めてしまった「薄桜記(さくらうた)」。
プロデューサーである大谷氏も是非この曲をアルバムに入れたいと言い出してしまったのである!
しかし、アルバムは全12曲で完璧にバランスがとれてしまっている。そこで二人はどのような結論を出したのだろうか?




<Vol.1からのつづき>




それで、今度は大谷さんから「どうしてもこれを入れようよ」っていう話になりまして。
で、入れるためにはどうする?って話になって、それで実は、、、



イントロに波の音を入れたんです。



実はアルバムバージョンは、あの波の音で「ここから世界観が違うんですよ」というのを表しているんです。
もちろんそのときはシングルカットなんて決めてなかったんで、波を入れることも全然問題なかったんです。

あたまっからシングル化を考えていれば、波の音を入れる必要はないんですが、いわゆるアルバムの中のひとつの付録みたいな感じで、波の音が入って「薄桜記(さくらうた)」が始まる、みたいな感じにしたんです。

それで、アルバムが完成して、インストアライブが始まるわけです。
このアルバムのプロモーションとして何を歌うかって話になるわけですよ。

で、じゃあ一発目は「苦悩〜Paine」のタイトルともなっている「陽炎の街」を一発ド派手にゴン!と歌っておいて、どっちみちアルバムの13曲を全部歌っちゃうことは出来ないわけですから、そこでやっぱり耳につくのは「薄桜記(さくらうた)」ですよねって話になりまして、「薄桜記(さくらうた)」を各地で歌ってたんです。

インストアライブは全国で6カ所で行ったんですけど、アルバムを買ってくださったお客様と握手をしながらいろんな反響を頂いたんです。
「アルバムどうですか?」ってお伺いしたら、
「良かったです〜!昔のなつかしい曲もアレンジされて入ってたり、新曲も聴けて!」
って、いろんな反響をいただいたんですが、その中で8割〜9割のお客様が、
「薄桜記(さくらうた)が良かった」っておっしゃってくれたんですよ!



それで、僕の中であの予感みたいなものがどんどん現実として大きくなってくるわけですよ。
「薄桜記(さくらうた)」っていいんじゃないかなっていう(微笑)



で、僕の友人のタレントさんや俳優さん何人かに少し聞かせてみたところ、
ロンドンブーツの田村淳君とか、すぐメールをくれましてね。
「兄貴!なぜに〜な〜ぜに♪っていうの早く聞かせてくださいよ!」って(笑)
一回しか聞かせてないのに、「なぜに〜な〜ぜに忘れ〜られ〜な〜いってのが忘れられないんですよ!」なんて言ってくれたんです。






それを僕のサムライギターを作ってくれたESPの担当者に
「この曲はね〜なんか予感があるんだよね〜」なんて話をしてたんです。

そしたら、その話をESPグループの上層部に話をしてくださって。
そしたら「いいですね〜」って話から、あれよあれよという間にESPの音楽部門であるトライスクルレコードからシングル発売って話にまでなっちゃいまして(笑)




で、僕としては「薄桜記(さくらうた)」のボーカルトラックはもう一度録りなおしたいっていう想いが強かったんです。
なんでかっていうと、アルバムバージョンの「薄桜記(さくらうた)」って、実はあれ、一回しか歌ってないんですよ(笑)



ESP:「えっ?ワンテイクなんですか?」



「そう。ワンテイクなんです(微笑)。あれね、あのときは夜中まで3曲を同時に録ってたんです。で、夜中の1時くらいに、「ちょっと練習させてください〜」っていいながらブースに入って、いきなし歌ったんです。

あのアルバムバージョンの「薄桜記(さくらうた)」って、僕の中ではタテノリなんですよ。ギターのストロークをしながら歌うような感じなんですよね。で、練習として一回歌って、ブースから出てきたんです。
そしたら大谷さんやスタッフのみなさんがそれを聞いてらして、
僕が「どうでした?」って聞いたら、



「これでいいんじゃないかな?」って(笑)



「え???」みたいな(笑)



それに加えて、このアルバム、全部で13曲あるわけじゃないですか。
ほんとに時間がなかったんですよね。
そのときはまだ自分で作ってながらも、どこでブレスでどーだこーだってこともあんまり深く考えてなかったんで、とりあえずなんときゃしなきゃ!っていう思いで歌ったんですよね。



ESP注:ブレスとは息継ぎのことで、メロディのどこでブレスするかというのもボーカルテクニックのひとつである。



でもそれをみんながオッケーって言うし、実際僕も聞いてみて、「あ、いいじゃない」って思いつつ、ほんとはもっと歌っておきたかったんですが、なんとなくそのままオッケーテイクにしちゃったんですよ。

でも、インストアライブをずっと続けていくうちに、自分で「歌心」っていうものをつかんでくるわけですよね。どこに感情のポイントをおくか、とか、想いがどんどん曲に入ってくるわけですね。
そうするとどんどん歌い方も変わってくるでしょ?

それで、ビブラートの効かせ方にしても、歌のポイントのおきかたとか、アルバムバージョンで歌ったのとはどんどん変わってきている自分がいるわけですよ。それで、インストアライブを制作しているTBS側のスタッフからも、「今日のさくらうた、最高でしたよ!」とか言ってくれるときがあるわけですよ。
それで僕も「なんか掴んじゃいましたよ〜!」なんて言ってね(微笑)
そこに、ちょうどシングルの話が降ってわいて来たわけなんです。

で、トライスクルのプロデューサーの海老根さんとお話している中で、当然「歌を録り直したい」っていう話になるわけです。そしたら、「どっちみちだったら、オケもやり直しましょうよ!」っていう話になりまして。

アルバムバージョンはバイオリンが4本しか入ってなかったんですよ。
アレンジとして、ギターのアルペジオ中心の雰囲気にして、例えば「かぐや姫」みたいな、あえて80年代調の雰囲気を狙ってたんですよね。アルバム全体の狙いとして、80年代を彷彿とさせるサウンドっていうポイントを狙ってたんで。
それでわざとギターのアルペジオを効かせて、バイオリンはあえて4本で、これはどちらかというと「さだまさし調」になるんですよね(笑)それはそれで僕は好きだったんですけど、今回はアレンジを変えてみようと。



案として2つあったんです。
大谷さんがやってくださったもともとのアレンジで、ファンの方は気に入っていただけたわけじゃないですか。このアレンジを、そんなに崩すべきじゃないんじゃないかなっていう。

あともう一つは、アルバムは80年代テイストで良かったんだけども、あんまりそればっかり言われてしまうので、シングルとなるにおいては、新しさというか、新しき中に80年代の香りがあってもいいんだけども、何かプラスアルファが必要だろうと。そうすると、全くアレンジテイストを変えてみるべきなのか、例えば新アレンジャーを連れてきて、大谷さんに監修をしていただきながらやっていく方法もあるだろうと。

この2つですごく悩んだんです。



<つづく>


「薄桜記(さくらうた)」の一人歩きは大谷氏を巻き込むだけでは止まらず、京本政樹氏の芸能界のご友人の方々はもちろん、アルバムを聞いた全国のファンの皆様をもすっぽり巻き込んでしまったのである!
一度聞いたら耳を離れないメロディ。そして哀愁漂う詩の世界は、聞く者の心にそれぞれのドラマが浮かんでくるにちがいない。
これぞ、シンガーソングライター・京本政樹氏ならではのものと言えるだろう。
ファンの皆様からの強烈な反響にしっかりと手応えを感じた京本氏は、この曲をシングルカットすることを決意する。
そして、ついにESPの音楽レーベルであるトライスクルミュージックも「薄桜記(さくらうた)」の一人歩きにすっかり巻き込まれることになってしまったのである!
しかしシングルカットに当たり、京本氏はまたも苦悩に陥ることになってしまう。
はたしてどのような決断が下されたのであろうか!

次回、神妙に待て!
取材と文・ESP







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