1997年、衝撃のソロデビューアルバム「TRUTH?」から10年。
圧倒的なスケールで唯一無二のオーラを放ち続けるSUGIZO氏の、自身初となるベストアルバムが発売!
昨年末のLUNA SEAの一夜限りの復活が記憶に新しいが、ソロ活動はもちろん、JUNO REACTOR、S.K.I.N.、X JAPAN等、ますますグローバルに羽ばたき続けるSUGIZO氏にお話を伺った。
ESP:SUGIZOさんのソロ活動が10周年の節目ということで、初のベストアルバムとなるわけですが、曲順を見させていただいてびっくりしました・・・というか逆にSUGIZOさんらしいなとも思ったのですが。
SUGIZO:うん。シングルが一個も入ってない(笑)
ESP:はい・・・普通、ベストって言いますといわゆるシングルを集めて・・・
SUGIZO:そんな安直なものにはならないですね(笑)
ESP:さすがです・・・ではあらためまして、この楽曲たちは一体どのような理由で選ばれた楽曲たちなのでしょう?
SUGIZO:選曲にあたっては、いくつかの意図があって。
まずは、「自分の本当の意味でのベストって何だろう?」ということです。
それって多分、本当に自分の中からナチュラルに生まれたもの。
各「時代」の様々な音楽的なスタイル、アプローチ、表現方法、そういう表層に束縛されない、「時代」を飛び越えられるような自分の音楽たちが、これまでの各作品の中にたぶん1/3ずつくらい入ってるんですよね。
2/3くらいは、その時期とともに埋没してしまうレベルのものだと思うんですけど(苦笑)
ということで、まずひとつは自分の中で「時代を飛び越えられるもの」。
もうひとつは、これまで何年も活動して来て、今、確実に自分が認識していることは、当たり前なんだけど、自分の表現手段の最も有効なツールは「ギター」である、と。
そのギターを真ん中に据えたもの。
もちろんソロの表現方法の一環として、歌を歌いますし、ヴァイオリンも弾きますし、いろんな道はあるんですけど、やっぱりもう一度自分の初心というか、ギターを中心とした表現を軸にまとめたらこうなったという感じですね。
ESP:まさにこの10年間を凝縮したアルバムになってますが、10年前はLUNA SEAがあったわけですよね。そのLUNA SEAがいったん活動停止した時期に「TRUTH?」という作品が誕生したわけです。
そしてLUNA SEA終幕後、ソロとしてサウンドトラック含め様々な活動をなさって来たわけですが、やはりバンドがあるのとないのと、表現に違いというものはあるのでしょうか?
SUGIZO:当時、「TRUTH?」を作ったのは、もう11年前ですよね。
あの時は、あえて自分のバンドで出来ないようなことにフォーカスしてクリエイトしましたね。
ずっと自分の中に、ああいうものを表現したい、作りたいという欲求が溜まっていて。
でもそれは、バンドでは出来なさそうなものだった。そこに特化して製作したのが「TRUTH?」だったんです。
なので、いわゆるバンド形態で演奏するスタイルのもの、生ドラムを中心とした楽曲はあんまり入ってないんです。
だから、よりバンド形態に近くなっていて、生ドラム、生ベースと、ギターとっていう感覚でプレイ出来る曲が多くなっています。
そこに、97年以降からずっと追求をしている、自分流のエレクトロニクスを、いかに掛け合わせて音楽を作るかっていうことにすごく集中してましたね。
ESP:97年に初めて「TRUTH?」を聞かせていただいた時は、たしかにバンド形態の楽曲は少なかったんですけども、 それで逆に「LUNA SEAのあの楽曲のあのエッセンスってSUGIZOさんだったんだ!」ということがよくわかってとても興味深かったです。
SUGIZO:LUNA SEAでは作曲をすること、アレンジをすること、音楽の方向性を位置づけること、そういうことが自分の役目でしたね。
レコーディングの現場では、最初から最後までずっといてコントロールするような立場だったし、やっぱり僕はものを構築して作ってゆく中毒なので(笑)
ESP:あともうひとつ、「TRUTH?」で驚いたのが、作品が持つグローバルな広がりです。
当時の日本のロックバンドのギタリストのソロアルバムという範疇を軽く超えていたというか・・・。
SUGIZO:当時のリスナーとしては衝撃がありました?
ESP:ええ、すごく。このESP Websiteをご覧いただいている皆さんもきっとそうだと思います。
SUGIZO:たぶん、その当時、LUNA SEAを聞いてくれていた世代の人たちっていうのは、おそらく日本の中の音楽、日本の中のロックバンドしか知らない人たちが多かったんじゃないかと思います。
テクノ、ドラムンベース、ジャズやクラシックなどは、あんまり知らない人が多かったかもしれないし、多分、他の国の言葉で歌われるものや、黒人のシンガーの歌などをあんまり聞いたことなかったかもしれませんよね。
でも当時も今も僕はあんまり変わってなくて。
当時から音楽に対する視野は「世界」でしたよね。
あのときもずっと活動の基盤がロンドンだったので、いろんな人種が入り交じってレコーディングをしていましたね。
もちろん、それには英語圏で活動するための気合いと、予備知識と、語学力が必要になってくるんですけど。
日本の中で完結しようとは一切思ってなかったので。むしろ日本の中じゃ「これは売れねーだろうな」って思いながら。
でも、売れる売れない関係なしに、自分の表現したい物を作ろうっていう気持ちしかなかったんですね。
今思うと、この「COSMOSCAPE」に収録するために自分がチョイスした「TRUTH?」時代の楽曲は、今聞いても恥ずかしくないというか、時代と国境は超えられていたんだなっていうのを、今感じます。
でも半分の曲は、今聞くと耳を塞ぎますね。
だから、やっと当時の日本という枠を飛び越えたい、人種の境界線を飛び越えて音楽で一つになりたいっていう理想が、やっと今、実を結びつつあるというか。
やっぱり近年のすごい急速なインターネットの普及、My Spaceを中心としていろんな国の人たちが友達として交われるような状況になって、音楽をアウトプットするということが、一瞬にしてそれがもう地球規模で活動出来るんだなっていうことを本当に感じます。
どこに行っても支持をしてくれているのを感じるし、やっと当時の理想に近づいて来ているなあって思っているので。
なので、今回の「COSMOSCAPE」は、さっき言ったように「時代」を超えるだろうと自分が感じるものと同時に、「国」を超えられるだろうなと感じる自分の音楽達を、どこの世界に行っても「これがSUGIZOの音楽です」ってこれ一枚を渡せば理解してもらえるようなものをカタチにしたかったんですよね。
ESP:今でこそ、日本のバンドがインターネットで人気に火がついたり、海外でライブをやることが普通な時代になりましたけど、ネット黎明期の当時、文字通りゼロから切り開いて行ったのはSUGIZOさんですよね。
独自ドメインでホームページを開設するのも早かったじゃないですか。
SUGIZO:そうですねえ。
ESP:sugizo.comは、バンドのギタリストが開設したホームページということでは、日本の音楽シーンでたぶん一番最初だと思いますよ。
SUGIZO:だから.comも取れてますもんね(笑)
ESP:はじめてsugizo.comにアクセスしたときは、すごくドキドキしましたよ。
あのときびっくりしたのが、ホームページから突然音が出たことです(笑)
まだブロードバンドなんてなかった頃ですよ。信じられませんでした。
SUGIZO:当時は技術的にもシステム的にも稚拙だったので、今となってはたいしたことじゃないんだけど、それを一生懸命みんなで作るしかなかったんですね。今はあまりにも進化して、、、インターネットが最も大きなビジネスの中心になっていますけど、当時インターネットって儲からないものでしたから。
ESP:sugizo.comを立ち上げる時に、ここまでのネットの進化というのは想像なさってましたか?
SUGIZO:もちろんおぼろげにはイメージはしてましたけど、でもここまで早いとは思わなかったですよね。
例えば50年代のSFの映画や小説を見ていると、例えば2001年のレベルで、もう人間は他の星に宇宙旅行出来る設定なのに、コンピューター自体は今よりも全然遅れているような描写がされていて。薄いラップトップパソコンもないし(笑)
「2001年宇宙の旅」のHALだって、あんなにでっかいコンピューターなのに、モニターや周辺機器はすっごい野暮ったかったり(笑)
そう考えたら、当時自分たちが夢見ていたSFの世界が、もう現実になっていて。
ある意味では当時、科学的知識に長けたSF作家たちが描写した世界よりも現在は進んでいますよね。
面白い時代になったなあと思いますよね。
今でこそ、アーティストが自らのホームページ、ブログ等を運営することは当たり前になっているが、当時、インターネットという全く新しいメディアに対して、SUGIZO氏ほど積極的にアプローチしたアーティストは存在しなかった。
音楽が流れることはもちろん、日本語以外の言語に対応したのもSUGIZO.COMが最初だったはず。
SUGIZO氏が現在のシーンに与えた影響は、音楽だけに止まらず、本当に計り知れないものがある。
常に各方面へアンテナをはりめぐらせ、グローバルな視点で物事を見続けているSUGIZO氏だからこそ、このような「時代を超えた作品」を作り出せるのに違いないと、あらためて確信した。
まさにSUGIZO MUSICの集大成。
「COSMOSCAPE」の時代を超越した15曲を、今のこの時代だからこそ、ぜひ体感してもらいたい。
特にこれから世界を目指すギタリストにとっては、この音像がワールドクラスのひとつの指標となることは間違いない!
それでは、次回はいよいよ気になるNEW GUITARのお話へと!
ギターのお話にからめて、X JAPANのお話から、LUNA SEAについてのお話もお伺いします。
(Interview & Text by Akihiro Sasaki / ESP)
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