前回のESPについてのインタビューでは、SUGIZO氏がギターを始めたきっかけからECLIPSEシリーズの誕生と進化、そしてNavigatorのSTシェイプにP-90タイプのピックアップを搭載したモデルに至るまでの貴重なお話をいただいた。
そして2007年、ついに最新のECLIPSEが誕生。このモデルがどのように製作されたのか、今回たっぷりとお話を伺った。
![]() ESP ECLIPSE S-VII BRILLIANT -MIXEDMEDIA- |
ESP:最新のECLIPSEであるS-VIII。このモデルの製作のきっかけはどのようなものだったのでしょう?
SUGIZO:やっぱ
り、長年ギターを弾いて来て、自分が求める好みは少しずつ変化してきますよね。
そこで、現時点の自分の理想のサウンドや、自分の理想の弾き心地や、自分が求めているレベルの高い、純度の高い部分を、やっぱり自分のモデルであるECLIPSEに転写したかったんですよね。
逆に言うと、この数年はECLIPSEを殆ど弾いてなかったんです。
なぜかというと、今の自分の求めるものが、当時の好みと方向が変わってしまっていたからです。
例えば、もう自分はFloydRoseはちょっと無理だな、とか、24フレットはちょっとイヤだな、とか。ネックのニギリ、スケールも含めて、今の好みが変わってしまっている。
でも、自分がここまで大切に進化させて来たECLIPSEの流れを、それだけの理由で断ち切っちゃうのは惜しいなあと思って、今の現時点での自分の理想のスペックを、もう一度ECLIPSEで再現してみようと思ったのがきっかけです。
ESP:前回のお話では、STでは、使用するピックアップがほとんどセンターとフロントだけ、という衝撃的な内容をお伺いしました。
SUGIZO:そうなんですよね。
ESP:もうリアは飛び道具だというお話にびっくりしたんですけども(笑)
SUGIZO:リアはほとんど使ってないので。逆にP-90ではリアをよく使うので、これを組み合わせちゃえば一石二鳥だなあって。
ESP:まさに合理的ですよね。
SUGIZO:合理的。無駄をいっさいしたくないので。
あと、シンクロナイズド・トレモロの中毒なので、それ以外はありえない、と。
ストラトのシンクロと感覚が近いようにしてもらいました。
アセンブリもストラトと同じですよね。
あと、信じられないんだけど、昔はトーンがなかったんですよね。自分のモデルに。
なんでなんだろう?今は絶対必要なのに。
ESP:ではここで、ESPアーティストリレーションの担当者、おなじみの進士に登場してもらいましょう。
進士:たしかにトーンは付けてませんでしたねえ。トーンを付けずに、ピックアップからの音を、出来るだけダイレクトにアウトプットするという考えもあったと思うんですけど。
あと、昔は、リアとフロントのミックスを結構使ってましたよね。
SUGIZO:今は出来るだけミックスは使わないようにしてますね。やっぱりミックスじゃない方が音は強いです。
でも、NavigatorのP-90ストラトではミックスが多いです。
逆にすごく強すぎるんで、ミックスにしてちょっと引っ込める。
ちょっと引っ込めるくらいなんだけど、それでも他のギターよりも強いくらい。
そう考えるとS-VIIIは今の理想の状態ですね。
ESP:ギターファンからすると見逃せないのが、ロングスケールですよね。
これまでのECLIPSEはずっとミディアムでした。
SUGIZO:そうですね。これもやはりストラトの流れですね。
ESP:そして、このヘッド、実は新デザインなんですよね。
進士:ロックナットでなくなった分、チューニングの安定を考えてヘッドのデザインを変えました。ナットからペグにかけて角度があると、それだけ弦のストレスが溜まってしまうので、なるべく角度をつけないようにデザインし直しました。でもデザイン的にも美しいというポイントを狙っていたので、ずいぶん設計に時間をかけましたね。
SUGIZO:そして、ペグはロック式なんですよ。
これで、チューニングのストレスはほとんどなくなりましたね。
ステージでもほとんどチューニングしなくなりました。
ESP:・・・えっ?ほとんどチューニングしないんですか???
SUGIZO:アーミングとピッキングだけで、チューニングを調整出来るようになってきたんで。
ESP:・・・またまたものすごいレベルのお話に突入してます。
SUGIZO:ペグはほとんど触らない。
ESP:信じられません。 。。
前回、弦を一年以上替えないというお話もすごかったですが・・・
チューニングの微妙な狂いを、アーミングとピッキングで修正しながら弾くわけですか・・・。すごすぎます。 。。
さて、お話を戻させてください。このS-VIIIが登場したのは、昨年末のLUNA SEAのGOD BLESS YOU〜One Night Dejavu〜ということでよろしいのでしょうか?
SUGIZO:S-VIIIブリリアントはLUNA SEAのときですが、S-VIII自体は実はその前からSHAGとかでは使ってたんですよ。
進士:もともとLUNA SEA用に考えたわけではなく、一年以上かけて試行錯誤しながら作っていたんです。
SUGIZO:それで、ちょうどLUNA SEAと重なったということですね。
ESP:LUNA SEAですと、相当多彩な音色が必要とされると思うのですが、いかがでしたか?
SUGIZO:ほぼ一本で全部できる感じですね。あとV-VIIIです。
V-VIIIはスペックが同じで、基本的にはシェイプが違うだけなんですけど、サウンドはやっぱり微妙に違っていて。
V-VIIIの方が、いわゆるハードロック的な音ですね。なので、ザクザク感が欲しいときはV-VIII。
S-VIIIの方が、よりスタンダードというか、NEW WAVE的なことやファンキーなことに合いますね。
あとLUNA SEAの時は、どうしてもP-90とアルニコ5のミックスの音が必要になって、それがNavigatorの「ニセkiku」になりました。この3本でほぼ出来ましたね。
S-VIIIとV-VIIIの組み合わせが、今、自分の中ではベストで、V-VIIIはX JAPANでもよく使ってます。
![]() ESP ECLIPSE V-VII |
ESP:X JAPANでは、ハムバッキングを搭載したS-IIも使用していますよね。

SUGIZO:そうなんですよ。最初はX JAPANでもS-VIIIでやりたかったんですけど、X JAPANの、いわゆるハードロック的サウンドを再現するのに、どうしてもハムバッキングのリアが必要だと言うことに気がついたんですね。それともうひとつ、hideさんのプレイを完全に再現しようと思うと、ミディアムスケールじゃないと指が届かないと分ったからです。hideさんはモッキンバード型で、もともとミディアムスケールでしょ?
ミディアムのハイポジで、相当ストレッチして初めて弾けるフレーズも結構あったので。
それは、22フレットのロングスケールではちょっと無理だったんですよね。
ESP:たしかに、ものすごい速弾きフレーズが多いですもんね。
SUGIZO:X JAPANの曲ってやっぱり複雑で、かなりのスキルを要求されるんですよ。
hideさんはね、いわゆる表現者として、ロックンロールスターとして、すごい地位を築いてるけど、実は、ギタリストとして見ても相当な人だったんだなっていうのを、実際に演奏してみて初めてわかりましたね。
だから、X JAPANをちゃんと再現するための自分流のギターとして、S-IIが久々に脚光を浴びたっていう感じですね。
それにしてもJBはやっぱりいいピックアップですね。ハムバッキングの中では一番好きですね。(注:JBとはSeymour Duncan SH-4のことです)
普段あんまりハムバッカーは弾かないんですけど、逆にシングルやP-90で慣れているので、ハムバッキングが楽でね(笑)
ESP:なるほど。ちょっとオマケしてくれる感じですよね(笑)
SUGIZO:そうそう(笑)特にストラトのシングルは本当にごまかしが聞かないので、大変ですよ。
ESP:今回のX JAPANは、いかがでしたか?
SUGIZO:あらゆる意味で巨大なバンドなので、その巨大さを痛感したしたよね。
ひとつひとつの規模も、流れも、動きのスケールも、そして、遅れる時間も・・・すべてが巨大(笑)
すごいバンドですよ、やっぱり。
ESP:では、もうひとつのNEW GUITARであるセミアコのE-IとE-Vについてお話を御伺いします。


SUGIZO:以前からずっと自分の主力ツールにしたかったセミアコを、ずっと研究していたんですよね。なかなか進士さんと「これだ!」っていうものが作れなくて、何年にも渡って試行錯誤してきて、やっとここで、ある意味結実できたギターが生まれたかもなっていう感じです。これからこの2本は重要なポジションに躍り出てほしいですね。
ESP:SUGIZOさんにとって、セミアコってどういう位置付けなんでしょう?
SUGIZO:実は、ジャムをするときはセミアコでやりたいんですよね。
自分の中で、よりジャズギターの方向にシフトしたいんですよ。
その方向へ行く時に、もちろんストラトも素敵なんですけど、もっと奥行きが欲しくなるんですよね。
なので、自分のロック的なアプローチと、これから追求して行くジャズ的インプロヴィゼーションを、上手く掛け合わせられないかというのが、このE-I、E-Vなんです。
アームを搭載するのに、いろいろ苦労しましたよね。アッセンブリのノブの位置とか、相当無理があったのを改良しながら、なんとかここまで。
ESP:今回は木材の変更もあったんですよね。
進士:最初のE-Iは、セミアコのボディー材として一般的なメイプルをチョイスしたんですが、今回はあえて実験的にアルダーを使ってみたんです。
僕の知る限り、アルダーを使ったセミアコって初めてだと思います。
結果として、ソリッドでは無い深いローレンジと、粘りのあるミッドレンジで非常に豊かな音になりました。
SUGIZO:今後、追求していきたいギターですね。
ESP:しかし、こうしてS-VIIとE-I、E-Vと、現在の最新のNEW GUITARを見てみますと、もう相当に画期的といいますか・・・SUGIZOさんとESPとのコラボレーションもついにここまで進化したかという感じがします。
SUGIZO:そうですね。・・・でも自分的には、必要なものを組み合わせただけなんですけどね。
ESP:しかし、これまでギターメーカーとして、まさにSUGIZOさんと一緒に進化して来た感がありますよね。
現場でしかわからないノウハウといういうものがたくさんありましたし、そういったものを確実にうちの通常の製品ラインナップに反映することが出来ました。
SUGIZO:ほんとに、やってみなきゃわかんないんですよね。
進士:LUNA SEAの現場は、本当に「実験劇場」でしたよ。
SUGIZO:劇場なんだ(笑)
進士:例えば、普通の現場でギターがハウリングを起こしたとき、アンプのGainや歪みを抑えたり、スピーカーの向きやEQの設定をいじると思うんですけど・・・
SUGIZO:このピックアップを見てくれ!と(笑)
進士:それで・・・そう言われるとこっちもやらなきゃ!と思って、ピックアップのロウ漬けのやり方から、ボディーへの固定の仕方まで、ありとあらゆる試行錯誤をしましたよ。
SUGIZO:やっぱり、ギターってステージで弾かれて初めて輝くので。
そのステージの時に、細かいいろんなトラブルや汚点があってはいけないんですよね。
良いギターってのは、必ず、どこの現場でもどんな状況でも良いんですよ。
不安定なギターは、現場によって扱いが左右されてしまう。
やっぱりそれをクリアしないと、時代を超えて良いものにはならないんですよね。
これは音楽と同じですよね。
なので、やっぱり努力に努力を重ねて、研究に研究を重ねるっていうのは大変だけど、楽器の進化にとっては欠かせないことなんだと認識しています。
進士:そうですね。でも楽器として一番大事なのは、やっぱり音。いい音であることがベーシックにあって、チューニングの安定、ノイズ・ハウリングの問題、そして弾きやすさなど全て解決しないと、やっぱりライブでは使えないんですね。
SUGIZO:あと、単純な話、ステージでカッコ良くないとダメです。
カッコ良くないものには誰も付いてこない。どんなに機能は良くても。
ESP:おお!
進士:おっしゃる通りですね。それにSUGIZOさんは楽器をカッコ良く見せてくださるアーティストなんです。
やっぱり楽器を活かすも殺すも弾き手次第だと思うんです。
SUGIZO:そうですね。いや、そういう人じゃないとステージに立つ資格はないんでしょう。
例えばPRのトリプルネックは、普通の人がパッとこれだけ見たら、カッコイイと思わないかもしれない。
それをいかにカッコ良く見せるか。
カッコ良く見せるような、立ち方、衣装、もちろん出てくる音も含めて、ね。
そこにちゃんと意識をフォーカス出来る人と、そうじゃない人で、人前に立つ資格がある人とそうじゃない人の境界線があると僕は思いますよ。
ESP:すごいお話です。
進士:だからこそ、SUGIZOさんは今のロックバンドのギタリストに多大な影響を与える存在になったんですよ。
SUGIZO:全く意図していなかったことですけどね(苦笑)
進士:だって去年のGOD BLESS YOU〜One Night Dejavu〜で、あんなにバンド関係のゲストが多いライブなんて、そうないですよね。
SUGIZO:光栄なことですね。
でもオレはもっともっと自分が切磋琢磨しなきゃいけないと思ってるので。でも、素直にありがたいですね。
ESP:その、GOD BLESS YOU〜One Night Dejavu〜、そして味の素スタジアムでのhide memorial summit、メンバーが7年ぶり集まって音を出したわけですが、いかがでしたか?
SUGIZO:そうですね。7年間がとても、良い意味で僕らに作用してくれたと思いますね。
やっぱりみんなソロ活動を含めたいろんな活動をして、成功もして失敗もして、いろんな体験をして、大人にもなったし。
自分たちの存在の必要性というものをちゃんとわかりながら一緒にいられる。
合わないところをお互いぶつけあっていがみあうより、合わないところはそのまま合わないままでいいじゃん、と。
合うところでちゃんと交わろうよ、っていうリスペクトの仕方が出来るようになった気がしますね。
なので、リハに関しても、本番に関しても、心地よかったですよね。
無駄なぶつかりあいはもうする必要がないんだと。お互いわかってるから。
そして、バンドとしての存在意義。
とてもありがたいことに、一瞬にしてチケットが売り切れてくれて。
みんな求めてくれてるんだっていう、その責任感。
すべての意味で、これはちゃんと大事にしなきゃいけないプロジェクトなんだっていうのを再認識できましたね。
一時は個人的にオレの中でLUNA SEAを否定していた時期もあったので。
その否定的な感情をリリースしたら、すごく楽になりましたよ。
なので、今後どうなるかわからないですけど、LUNA SEAとしての存続は、やっぱりさせるべきだと思うし。
どの形で、どのタイミングかは全くわからないですけど、「その先」は十分ありえますね。
ESP:LUNA SEAの7年ぶりのライブ。そしてソロ活動10周年。
SUGIZOさんにとってひとつの節目の年を超えて、今後の活動についてお聞かせください。
SUGIZO:SUGIZOとしての音楽を、これからもより追求して行きたいというのは、もちろん大前提ですね。
ただ、SUGIZOという音楽で、でっかい商売をしようとはあんまり思ってなくて。
儲けたいから音楽を作る、ビッグになりたいから音楽を作る、全然ありなんですけど、SUGIZOとしての自分のライフワークは、全くそういうビジネス的な部分ではなく、自分のプライベートな、スピリチュアルなマインドを音に転写をする、というそのやり方をちゃんと大事にしたいなと思って。
同時に、LUNA SEAはどうなるかわからないですけど、X JAPANが入って来たら参加することになるし、JUNO REACTORはずっと続いてるし。
ギター弾きとしての、様々なプロジェクトの活動はずっと続くでしょうね。
ESP:本当にSUGIZOさんの回りが、ますますグローバルになってきましたよね。
以前からずっとおっしゃっておられる音楽に垣根がないんだという状況が、本当に実感として伝わってきます。
SUGIZO:もう垣根は全く存在しないですね。
JUNO REACTORでこの前ヨーロッパのツアーをしてきて、まだ正式決定はしていませんが、次にアメリカ、メキシコ、ブルガリアとかが入ってくる予定なんです。
この間のヨーロッパツアーで、例えばギリシャで4,000人お客さんが来るんですよね。
そのうちの2/3はいわゆるトランス、パーティーピーポー。1/3はいわゆるゴシックのお客さんなんですよ。
JUNO REACTORもこの数年ゴシックの方向に来ていて。ゴシックの方向は僕ももちろんやってきていて。ゴシックの人プラス、日本の音楽が好きな人も集まるんですね。
パーティーピーポーとゴスの人たちが一緒に、いわゆるサイケデリックトランスを楽しんでるんです。
その中で僕はアヴァンギャルドギターを弾きまくってるんですね。
お客さんは熱狂している。
そのグローバルさは本当に、ある意味理想ですね。
JUNO REACTORのメンバーで日本人は僕だけで。ボスのBENはイギリス人。
女性のシンガーもイギリス人で、カテドラルなゴシックな歌を歌う人なんです。
もう一人のシンガーはジマャイカなんですよね。そしてパーカッショニストはみんなアフリカなんですよ。
ドラマーはアメリカ。本当に人種と国境を超えていて、そういう状況で音楽を自然に楽しんでやれているので、本当に素敵だなと思いますね。
今回のお話を伺って、本当の意味でのグローバルとは何か、ということをあらためて考えさせられる思いであった。
「ギター1本で、世界中のオーディエンスを熱狂させる」
人種、国境、ジャンル、あらゆる垣根を超越して、世界へ羽ばたいてゆくSUGIZO氏。
ESPとのコラボレーションはさらにさらに続いて行きます!
これからもぜひご期待ください!!!
(Interview & Text by Akihiro Sasaki / ESP)

OPEN 18:00 / START 19:00
1F STANDING ¥5,500(TAX IN・ドリンク代別途)
一般発売:9/27(土)
チケットぴあ:0570-02-9999 (Pコード:299-916)
イープラス:http://eplus.jp
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