ESP SNAPPER 20th Anniversary Special Vol.13

2024/10/18

2003年12月のリリースより、ESP SNAPPER(スナッパー)シリーズは2023年で20周年を迎えることができました。おかげさまで皆様にご好評いただき、SNAPPERの満20周年Special Yearとなりました。
これから2024年にかけて、様々な企画やキャンペーンを計画しております!
こちらでは開発が始まった当時を振り返りながら製品開発時の秘話やこの仕様に至った経緯など、ちょっと別の角度からSNAPPERを深掘りしていきたいと思います。
随時更新していきますので乞うご期待ください!

[ 開発チームメンバーによるSNAPPER回顧録 ]

第二章 – マイナーチェンジ ~ パワフルなサウンドへの挑戦

-13- TYPE-2への布石

SNAPPERがリリースされておよそ12年。
評判を耳にしたミュージシャンがストックのまま使用してくださるケースも増えて行く中、SNAPPERを基にしたオリジナルモデルが欲しいというご依頼を多く頂くようになりました。
一人ひとりのミュージシャンに合わせたギターをカスタムオーダーで製作するESPとしてはとても楽しい挑戦です。もちろん喜んでチャレンジさせていただきました。

カスタムメイドは、各部に好みの仕様を加算すれば良いという物ではなく、全体の調和をイメージして何かを抑え整える、足し算と引き算によるバランス取りが肝になってきます。各ミュージシャンの好みを聞きながらスペックを決め、その人のスタイルにおいてベストな道具としての最適解を得るために相談を重ね、場合によっては根本となる部分の設計を改修する事もあります。

ちょうどこの頃は、ハードなサウンドのギタリストとコラボレーションする機会が増えて来た時期でもあり、シーンが求めるサウンドの傾向に変化が見えてきたタイミングでもありました。そこで新たな可能性が生まれてきました。よりガッツのあるサウンドへシフトしたSNAPPERです。

今まで大きな仕様変更をせずちょうど干支が一周した折りでもあったので、「SNAPPER-TYPE2としてシフトチェンジをしてみるのも面白い機会かもしれない」とマイナーチェンジへの着手が始りました。

【1】ボディのピックアップ・キャビティの変更

軽快な鳴り感を得るために変形ランチボックススタイルのキャビティを採用したSNAPPERですが、TYPE-2ではよりがっしりとした鳴りを得るためにシンプルなSSHキャビティへ変更しました。これはSNAPPER-Sの開発で適格な効果が出たポイントだったためすんなり決定しました。ピックアップ・キャビティの設計を小さくしたことによりバランスが取られており、鳴りの物足りなさは感じません。

【2】エレクトロニクス

ガッツのあるサウンドというコンセプトではありますが、従来のしなやかなトーンキャラクターもきちんと残したい事もあり、静と動どちらのトーンも的確に表現できるややパワー感のあるピックアップを選定するように注意しました。

やはりプロの現場ではハイゲインなサウンドにおいてもシビアなノイズ対策を望まれる声が大きく、シングルコイルはSeymour Duncanのスタックタイプを搭載する事にしました。
ネックとミドルポジションに採用したSTK-S7 [Vintage Hot Stack® Plus Strat]は、ミディアムゲインの程よいパワーとブライトできらびやかな音色を兼ね備えたモデルです。

ブリッジポジションのハムバッカーはSeymour DuncaのSH-16 [59 Custom Hybrid]をチョイスしました。大定番ピックアップであるSH-1 [59 model]とSH-5 [Duncan Custom]の2つの異なるコイルにアルニコ5マグネットを組み合わせたモデルです。SH-1 [59 model]の艶やかなトーンにSH-5 [Duncan Custom]の気持ちのよいエッジとパワーが組み合わさったハイブリッドタイプで、ハイゲインサウンドにおいても心地よい分離感を得られます。

シングル、ハムバッカーともに、さまざまなサウンドメイキングに対応できるオールラウンドタイプの秀作ピックアップを選ぶ事ができました。

【3】バックハンドカットの形状の変更

ハイポジションの演奏時に手の甲の当たりを防ぐ目的で採用されたバックハンドカットの形を変更しました。SNAPPERのバックハンドカットは木の削りをなるべく小さくしたいという意図があり、リリース時は最小限のカットで設計されていました。様々なプレイヤーに手に取って頂きましたが、特にパワープレイヤーの演奏はギターを非常に低く構えるパターンが多く、ジョイント部をそのまま握り込んで演奏するミュージシャンも多い事が分かりました。そこで今までの形状を生かしつつ、更に握り込みやすいように大き目なカットに設計し直しました。

【4】ネックジョイント

ネックジョイント部分にも新たな構造が採用されています。がっしりとした鳴りとより的確な弦振動の伝達を狙い、SNAPPERのFLOYD ROSE搭載モデルに採用したERGOジョイントに変更する、という案が出ました。ですが、今回はハード/テクニカルに振り切るというよりは”従来のSNAPPERの特徴を残したマイナーチェンジ”という目標があり、サウンドやセッティングの兼ね合いからどうしてもネックセットプレートを採用したいという強い拘りがありました。そこで新開発されたのが「T-5 Ultimate Access Joint(T-5アルティメイト・ アクセス・ ジョイント)」です。

ネックジョイントは弦振動の伝達を担う非常に重要な部分です。「従来のプレートの程良い遊び感をコントロールしつつ、より無駄なく的確に伝振動を伝える」事を念頭に、ネックセットプレートの設計から始めることにしました。プレートでのジョイントの場合、ネックをしっかりビス止めする際にプレート自体に微妙な曲がりが生じてしまうケースがあります。曲がったプレートでは面での接地がかなわず、何とか強固なマウントを得るためによりビスを強く締め込む必要が出てきてしまい、ひどい時にはプレートに更なる曲がりが生じてしまう事もあります。

そこで「面」や「形」の精度を非常に高く製作できるチタンに着目しました。チタンは非常に硬く正確な削り出しが出来る事に加え、メッキ処理も必要ないのでより誤差の小さい確かな精度を確保できます。さらに5本のビスを使ってジョイントできるように設計することにより、締め付けトルクによる曲がりが生じず、よりネックジョイント部の安定を狙えるものとなりました。プレートがきちんと面で支えるので締め付けトルクの調整による音の追及も大きく幅が広がりました。軽量な素材である事から木の自由な鳴りをそのまま自然に引き出せるという利点もあり、チタンならではの華やかなプレゼンスもサウンドのレンジの拡張に一役買っています。形状は一弦側を大きく丸くカットしたデザインを採用し、よりハイフレットでのプレイアビリティの向上を目指しました。

新しく設計したネックセットプレートは従来のネックセットプレートより若干長くなっています。それに伴いボディのネックポケット部も延長されており、結果的にネックとボディの接地面積が増えたことで、サウンドにも良い影響をもたらしました。

その後、トーンシフト用パーツという見地から「ブラス製」T-5ネックセットプレートも発売されました。ブラスは素材の持つ艶やかなトーンと共に、重量によるサスティーンの伸び、中・低域のプラス感が顕著で、よりしっかりした方向への音色の色付けが出来ます。
厚さを3mmとかなり厚くとる事により、更なる重厚なサウンドが得られるとともに、曲げ強度の確保も両立しています。

チタンとブラス、よりお好みのサウンドに近づけられるよう、違いを比べてみていただいても面白いと思います。

そしてもう一つの改修点、SNAPPER TYPE-2の最も特徴的なポイントはCTシステムの再構築でした。

※本記事では、2016年発売のSNAPPER セカンドモデル(TYPE-2)の構造を解説しています。

(SNAPPER開発チーム メンバーK)

– つづく –

【合わせて読みたい】
◆ ESP SNAPPER-7 開発秘話

ESP SNAPPER 製品ページはこちら