ESP SNAPPER 20th Anniversary Special Vol.12

2024/08/20

2003年12月のリリースより、ESP SNAPPER(スナッパー)シリーズは2023年で20周年を迎えることができました。おかげさまで皆様にご好評いただき、SNAPPERの満20周年Special Yearとなりました。
これから2024年にかけて、様々な企画やキャンペーンを計画しております!
こちらでは開発が始まった当時を振り返りながら製品開発時の秘話やこの仕様に至った経緯など、ちょっと別の角度からSNAPPERを深掘りしていきたいと思います。
随時更新していきますので乞うご期待ください!

[ 開発チームメンバーによるSNAPPER回顧録 ]

第一章 – 開発秘話&ヒストリー

-12- トレモロトーンスプリング

今回は少し余談になりますが、SNAPPERに搭載されているESPオリジナルトレモロスプリングのお話です。

このスプリングはSNAPPER専用として開発されたものではなく、全てのトレモロ搭載のギターでの使用を想定して開発されたカスタムパーツです。

事の始まりはシビアなセッティングが要求されるアーティストの現場でした。
フローティングのセッティングを出す際に、使い心地の良い最適解を導くため非常に苦しむ場面が多々あります。スプリング3本では足りず、とは言え4本では多すぎる。
程良いバネの伸び加減、例えば3.5本的なニュアンスが何とか出せないものか?
そこで出した結論が少し柔らかいスプリングを作る事でした。
そもそもノーマルスプリングは1950年代当時のレギュラーゲージの弦が前提で設計された物のはず。
ライトゲージ主流の今、それに合わせたスプリングが必要だと考えたのです。

引きバネを柔らかくするには、線径を細くする、バネ系を大きくする、という2つの方法があり、そこから試行錯誤の旅が始まりました。10種類を超える試作スプリングを作り、実際に試して検証したところ、最終的に選ばれたのはノーマル品の約75%と60%の強さを持つものでした。

選ぶ際の基準になった事の一つとして、スプリングの変更が与えるサウンドの変化も上げられます。
元々アーティストの要望するセッティングに応える為のパーツとして開発をスタートしましたが、柔らかさによって音響特性への影響も大きい事が分かりました。
そこで、トーンシフトパーツとしての側面に着目し検証を進めたところ、我々の狙いに対して非常にポジティブな音質が得られたものが2つありました。

それぞれ魅力的な特性を持つこの2種類のスプリングを、ESP Custom Lab Tremolo Tone Springsとして発売する事にしました。60%のものは”TYPE-1″、75%のものは”TYPE-2″というモデル名で発売されています。

ESP Custom Lab Tremolo Tone Springs TYPE-1

TYPE-1は色々なメーカーから発売されているスプリングの中でも特に柔らかく大きな振幅を持っています。サウンドにはまるでテナーサックスが豊かに鳴るような深い響きがあります。

ESP Custom Lab Tremolo Tone Springs TYPE-2

TYPE-2も市販されているスプリングの中では柔らかい部類に入り、とてもしなやかな振動を持っています。TYPE-1と比べて気持ちブライトなサウンドが特徴で、小気味良い音の張りと輪郭をコントロールしたい時にも非常に有効です。

もともと追加用のスプリングとして開発したものなので、最終的に60%の物か75%の物のどちらかを選ぶという物ではなく、各々好みのフィーリングを目指して積極的にミックスしてセッティングを導きだしてもらえればと思います。

もちろんノーマルスプリングや市販の他ブランドのスプリングとミックスして頂いてもかまいません。
TYPE-1とTYPE-2は見た目でどちらか認識できるようにメッキの色に特徴を持たせました。スピーディーにスプリングの入れ替え作業をするための工夫です。

フローティングセッティングにおいてのスプリングはトレモロの挙動をコントロールするセクションというだけでなく、弦の振動をそのままスプリングハンガーまで(トレモロブロックで中継されこそすれ)伝えるという役割があるとも言えます。
スプリングはもはや弦の一部であると言っても過言ではないかもしれません。
皆さんも弦の違いによるタッチやサウンドの変化を感じた事があると思います。
是非このスプリングを音作りに積極的に活用頂いて、自分にぴったりのセッティング出しを楽しんでいただければと思います。

参考までにですが、現在SNAPPER出荷時に搭載されているスプリングは”TYPE-2″、べた付けセッティングでの出荷に合わせて5本掛けとなっています。
お好みに応じてセッティングを攻め込んで頂けると、SNAPPERのまた新たな一面が見えてくるかもしれません。

※本記事では、2003年発売のSNAPPER ファースト モデルの構造を解説しています。

(SNAPPER開発チーム メンバーK)

第一章 -完-

【合わせて読みたい】
◆ ESP SNAPPER-7 開発秘話

ESP SNAPPER 製品ページはこちら