ESP SNAPPER 20th Anniversary Special Vol.4

2024/02/09

2003年12月のリリースより、ESP SNAPPER(スナッパー)シリーズは2023年で20周年を迎えることができました。おかげさまで皆様にご好評いただき、SNAPPERの満20周年Special Yearとなりました。
これから2024年にかけて、様々な企画やキャンペーンを計画しております!
こちらでは開発が始まった当時を振り返りながら製品開発時の秘話やこの仕様に至った経緯など、ちょっと別の角度からSNAPPERを深掘りしていきたいと思います。
随時更新していきますので乞うご期待ください!

[ 開発チームメンバーによるSNAPPER回顧録 ]

第一章 – 開発秘話&ヒストリー

-4- 【FLICKER-IIIの開発】

ブリッジはESPの大いなる財産「FLICKER(フリッカー)」を再構築して現代に蘇らせました。

初代FLICKER-IIIは、全体的に丸みを帯びたデザインを採用

ヒンジ構造を採用したFLICKERはトレモロとして非常に優秀な性能を持ち、今でも人気のあるブリッジです。しかし、FLICKER-Iが登場した当時よりもトレモロユニットの高い性能、ひいてはピッチに対して求められる精度は日に日に上がっています。今後さらに精度を求められると判断した我々は、構造の見直しから着手する事にしました。

FLICKERの特徴であるヒンジ構造による優れた部分は生かしつつ、より精度を高く、よりスムースなアクションを手に入れる為に試作を繰り返しました。沢山の試作を検証していくにつれ、物理的な精度を上げれば上げるほどトレモロの挙動が機械的になっていく事が分かってきました。

最終的に「常に荷重のかかっている軸に対して軸受けはタイトである必要は無い」という事に気づき、そこに適切な遊びを取り入れる事にしました。この設計が「フリー ムーブシステム」と呼ばれるものです。
アームバーを揺らす力がヒンジ全体に分散され、偏りを感じない適度なトルク感、そして滑らかなア―ミングを実現しました。

試作品のヒンジ構造

普段トレモロをお使いの方は良くお分かりかと思いますが、FLICKER-IIIもノンロックタイプのトレモロなのでナット部でいくらかのチューニングのズレが生じます。しかし、高い精度とスムースな稼働を適切に共存させることで、アーミング後におけるチューニングの戻りにおいて非常に良い結果が得られました。

サドルの素材には削り出しのブラスを採用しました。サウンドに輪郭と艶があり、弦振動の伝達も非常に良好です。ベースプレートはサドルを囲い込むような構造になっており、サドルのズレやブレも起こりません。

アームバーはねじ込み式を採用し、同時に受け側にナイロンスリーブとイモネジを仕込んでトルクの調整も出来るようにしました。イモネジの締め込みでアームバーを固定する事もぶらぶらさせる事も可能です。

FLICKER-IIIの開発時、ピッキングへの反応も重要視していた開発チームは、最大限の感度を得るためにジュラルミンのサスティーンブロックをチョイスしました。非常に軽量であるため反応速度が極めて速く、フェザータッチのピッキングも的確に振動に変えてくれる素材です。かつアルミよりも強度があり素材自体に制振性があるためサスティーンも良好です。サウンドはアルミ系の特性に近く、プレゼンスが鳴り過ぎず耳障りがなめらかで、空間表現の良いナチュラルトーンが得られました。

ジュラルミンブロック

このサスティーンブロックは後に、よりパワフルなオーバードライブサウンドやより強いサスティーンを求めるニーズが多いことからブラス製に変更されます。これによりサウンドは更に音の輪郭の整った、タイトでパワー感のある方向へシフトチェンジしていきました。

ブラスブロック

ある意味ファーストタイプは特徴的な仕様であったとも言えますが、繊細な表現をされるプレイヤーのタッチに追従する最大感度を目指した特別な個性を持たせた製品であったとも思います。
カッティングを主体としたプレイをされる方も、もし機会がありましたら是非一度触ってみてください。コンプが不要なほど軽快な立ち上がりは唯一無二です。

※本記事では、2003年発売のSNAPPER ファースト モデルの構造を解説しています。

(SNAPPER開発チーム メンバーK)

– つづく –

【合わせて読みたい】
◆ ESP SNAPPER-7 開発秘話

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