ESP SNAPPER 20th Anniversary Special Vol.19

2025/05/14

2003年12月のリリースより、ESP SNAPPER(スナッパー)シリーズは2023年で20周年を迎えることができました。おかげさまで皆様にご好評いただき、SNAPPERの満20周年Special Yearとなりました。
そして2025年、遂にSNAPPERは次なるステップへ飛躍します。

[ 開発チームメンバーによるSNAPPER回顧録 ]

第3章 – 飽くなき可能性の追求 ~ 新たなステージへ

-19- CTシステム TYPE-3

20周年という節目を迎えるにあたり、SNAPPERの象徴とも言えるヘッド部のCTシステムをリデザインすることにいたしました。

従来のTYPE-1およびTYPE-2という2種類のCTシステムは、共通の方向性を持ちつつ、それぞれ独自の特徴や魅力を備えております。どちらが正解というものではなく、プレイヤーの皆さまにとって最適な選択肢をご提供できるよう、明確なコンセプトのもとに設計を行ってまいりました。

上:TYPE-2、下:TYPE-1

 

各モデルのリリース以降、数多くのミュージシャンの皆さまから、ライブやレコーディングでの使用感に関する貴重なご意見を頂戴し、TYPE-1もTYPE-2も、確実にプレイヤーを支える「道具」として大きなポテンシャルを持っていると、私たち自身も実感し確信を深めてまいりました。

TYPE-1:タッチレスポンスを極限まで追求

TYPE-2:パワー感を重視

 

では、TYPE-3では何を目指したのか。
その答えは、「両方の良さをひとつにまとめる」ことでした。

 

近年のギター業界では、各ブランドが魅力的な新製品を次々と発表しており、製作技術も世界的に向上している中、業界全体として非常に前向きな成長を遂げていると感じております。そうした流れの中でも、従来のSNAPPERには充分な存在意義があるという自負はありましたが、私たちとしてはやはり、ESPならではの独自性や特長をさらに際立たせたいという想いが強くなっておりました。

「SNAPPERでなければならない理由」

を、もっと明確にしたいと考えたのです。

これまでSNAPPERブログをご覧いただいている方にとってはおさらいになりますが、TYPE-1は軽快な鳴りと繊細なタッチレスポンスを追求したコンポーネントスタイルで、立ち上がりの鋭さと反応の速さが特長です。
一方、TYPE-2は、ヘッドに段差を設けることで各弦のテンションバランスをあえて崩し、よりワイルドでトラディショナルな鳴りを高めた仕様となっております。

「TYPE-1もTYPE-2も魅力的だけど、ひとつにできないの?」

という声を、多くのミュージシャンの方々からいただいたことも、今回の再構築を決断する大きなきっかけとなりました。

独自の構造によって生み出されるタイトなアタックレスポンスと、現代のミュージシャンが求めるパワー。
その両方の魅力を「最良のバランスでひとつにする」。それが、私たちがTYPE-3で目指したゴールでした。

TYPE-3の基本構造は、段差のない傾斜付きヘッド、すなわちTYPE-1の構造をベースとしております。全弦のテンションが均一になるように各弦の角度に注意を払ったTYPE-1の設計によって、カッティングのワンノートですら明瞭に聞こえるような、立ち上がりとレスポンスが蘇りました。

では、そこにどのようにパワー感を加えていくか。
そのシンプルな答えが

「ヘッドの角度を見直すこと」

でした。

新たに設計図を引き直し、試作と検証を繰り返した結果、最適と判断した角度は4.5度でした。
この調整により、サスティーンが明らかに向上し、弦ごとの力強さもさらに強調されました。特に1弦・2弦のテンション感がよりしっかりと感じられる仕上がりとなっております。

TYPE-1の開発時にはSPERZEL製のペグを搭載する前提で設計しておりましたが、今回のTYPE-3ではGOTOH製のMG-Tを採用し、これに最適化した設計を行っております。GOTOHのペグはSPERZELに比べて弦穴の位置がわずかに高いため、最適な角度を保つために細かな調整を加えました。

もちろん、テンション感には個人差がありますので、GOTOH製の軸の高さが調整できるロック式ペグであるH.A.P.M.などを使用して微調整していただいても問題ございません。ベース構造の段階で十分なテンションを確保しているため、極端な調整を行わない限り、そのポテンシャルが損なわれることはありません。

「たかが角度、されど角度」

この変更の効果は非常に大きなものでした。
シングルノートの力強さ、コードトーンの響きと迫力、今までのST系にはなかった整った音の粒立ち、そして繊細なタッチにもパワフルなピッキングにも応えるダイナミクス…。
どのような演奏スタイルにも応える、非常に弾きごたえのある仕上がりになったと実感しています。

もはやSNAPPER開発の「お決まり」とも言える工程となっておりますが、リサーチや設計はもちろん、新しいCTシステムのための材木調達から実機による検証まで、一切の妥協なく丁寧に取り組んでまいりました。

その結晶が、この「CTシステム TYPE-3」です。
ぜひ、実際に手に取って、その進化を感じていただけましたら幸いです。

つづく…

(SNAPPER開発チーム メンバーK)

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