ESP SNAPPER 20th Anniversary Special Vol.20

2025/09/26

2003年12月のリリースより、ESP SNAPPER(スナッパー)シリーズは2023年で20周年を迎えることができました。おかげさまで皆様にご好評いただき、SNAPPERの満20周年Special Yearとなりました。
そして2025年、遂にSNAPPERは次なるステップへ飛躍します。

[ 開発チームメンバーによるSNAPPER回顧録 ]

第3章 – 飽くなき可能性の追求 ~ 新たなステージへ

-20- SNAPPER 2025仕様

SNAPPER 20周年モデルでデビューを果たしたCTシステム 「TYPE-3」。
その最新設計を注ぎ込み、ついにこの「2025年モデルSNAPPER」を世に出す日を迎えることができました。2025年モデルSNAPPERを簡単にまとめるなら「V2仕様ボディ × CT-System TYPE-3ネック」、そしてそこに細やかなチューニングを重ねて辿り着いた「よりリアルな存在感”を追求した一本」。そんな説明になるでしょう。 多くのプレイヤーに育ててもらいながら積み重ねてきた経験と情報のすべてを再検証し、確かな音像で緩みのないキレとタイトさが同居する、最良のバランスを目指して仕上げました。ここから先はこれまでの記事と一部重複する部分もありますが、2025年モデルのご紹介として改めて詳しくお話ししていきたいと思います。

CTシステム 「TYPE-3」

歴代のCTシステムの歩みとそこから得られた経験。それらのすべてを最良のバランスでひとつにまとめ上げることを目指し、再設計を行ったのが最新仕様の「TYPE-3」です。CTシステムは、各弦ごとの最良のテンションとバランスを導き出すためにペグポストの高さひとつまで緻密に計算して設計されています。 1&2弦は通常の段付きヘッドよりもわずかに強いテンションを持たせることでハイポジションの単音に独特の張りを与え、複雑なコードに含まれるテンションノートも明瞭に響かせます。

一方で低音弦側はあえてテンションを抑えることで自然で伸びやかなサスティーンが得られるのが特徴です。 この「押すところは押し、緩めるところは緩める」という設計思想こそがCTシステムの真骨頂です。TYPE-3の基本構造は段差のない角度付きヘッド、すなわち「TYPE-1」をベースに再構築し、最終的にヘッド角度を4.5度に設定しました。 この角度変更に合わせさらに4弦ペグの高さを見直し、全弦の調和をより精密にブラッシュアップしました。 きっと弾いた瞬間に、「より緩みのない全弦のテンション感が均一に揃った鋭い音の立ち上がり」と、「驚くほど軽快なレスポンス」を感じていただけるはずです。

T-5 Ultimate Access Joint

V2仕様と同じくチタンを精密に削り出して成形したプレートを搭載した「T-5 Ultimate Access Joint(T-5アルティメイト・アクセス・ジョイント)」を採用しました。 プレイアビリティが高く非常に良好なサスティーンを生み出すジョイントです。 硬質なチタンは寸分の狂いなく正確な削り出しが可能で、しかもメッキ処理を必要としないため、素材そのものの精度と特性をダイレクトに活かせます。 5本のビスによるジョイント構造はネックとボディを確実に固定し、安定感を格段に高めると同時に、音の芯や太さをより力強くはっきりとしたものにします。 チタン特有の華やかさを帯びたプレゼンスもサウンドのレンジの拡張に一役買っています。

バックハンドカット

TYPE-2

プレイヤーからの要望を受け、低めの構えでも握り込みやすい大きな切込みのバックカッタウェイ形状を採用しました。 ハイポジションで手首が前に出た際に手の甲がボディに干渉しにくくなることが一番の狙いです。 一弦側を大きく丸くカットしたT-5プレートと組み合わせることで、最終フレット付近までスムーズなアクセスを可能にしています。  ハイポジションでの演奏時のストレスを軽減し、自由度の高いプレイを支える構造になっています。

ステンレスミディアムフレット

サウンドキャラクターを最大限に引き出すため、数ある素材メーカーの中から音色と精度の両面で条件を満たすフレットを選定しました。 比較的柔らかめのステンレスで、プレゼンス帯域が穏やかで音の太さや豊かさを感じやすい特性を持ったタイプです。 ニッケルシルバー製の硬質フレットよりも音質が太く感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、ステンレスならではの広いレンジはしっかり確保されています。 指触りは滑らかでフィンガリングやビブラートがスムーズに行えるほか、長期間メンテナンスフリーで使用できる点も魅力です。 サイズはミディアムを採用。細めでやや高さのある形状が正確なイントネーションと繊細なタッチの再現性に寄与します。

Slim U グリップシェイプ

ESPオリジナルの「Slim U」タイプのネックシェイプを採用しています。スタンダードなUシェイプよりも両端の厚みを抑えることで、わずかにVシェイプに近い感覚を持たせた形状です。シェイクハンドスタイルで握った際には指が自然に回り込みやすい厚みと形状になっており、しっかりと握り込む感覚を大切にした設計となっています。ネックに指をしっかり添えることで手首が安定し、長時間の演奏でも疲れにくいのも特徴です。入念なプリプロダクションやレコーディングといったシーンでもプレイヤーの集中を妨げない、快適なグリップ感を意識しました。

指板R(コンパウンドラディアス 240~305R)

SNAPPERではおなじみとなる240~305Rのコンパウンドラディアスを採用しています。指板を円錐形にすることでハイポジションでも弦が指板から離れにくく、弦高を低く設定することが可能です。フラット寄りになるハイポジションは、チョーキング時に音が詰まりにくいという点でも大きな効果を発揮します。

牛骨ナット

ナットはこれまでと同様に牛骨を採用しています。滑りや強度のバランスに優れ、何よりもトラディショナルなサウンドを得られる点を重視した選択です。派手さはありませんが、ギター全体の響きを支える要のパーツとして信頼性の高いスタンダードな素材といえます。

SSHキャビティ(V2タイプ)

左:初期型、右:TYPE-2

ピックアップキャビティには、力強い響きを得るためにV2タイプのSSHザグリを採用しています。2025モデルではブリッジピックアップ部分のザグリを拡張し、シングルピックアップにも対応できるよう設計を見直しました。ピックガードの交換だけで3Sレイアウトに変更することも可能となり、プレイヤーのスタイルに合わせた柔軟なカスタマイズが容易にできるようになりました。

コントロール

SNAPPERらしいコントロールとして、引き続きミックスバリエーションスイッチを採用しています。これにより標準的な5ウェイセレクター配線では得られない「ネック+ミドル+ブリッジ」や「ネック+ブリッジ」といった、ミックスポジション時の組み合わせが可能になります。マスタートーンのスイッチポットについても継続採用としました。通常時のトーンはこれまで通りですが、プッシュアップ時に切り替わるキャパシター容量を「0.01μF(103)」から 「0.0068μF(682)」へと変更しています。ボーカルの後ろで適切な定位を取ることを意識し、ハイカットの効きはより軽く、プレゼンス寄りの高音域を適切にカットするようにしました。低音域~中音域には大きな変化を与えず、なるべく音像を崩さないことも意識しています。

ピックアップ

今回採用したセイモアダンカンのSSL-5&TB-4の組み合わせは、SNAPPERの新しい方向性を示しています。以前の仕様はローノイズやサウンドバランスの良さを重視し、現場対応力の高さを持ち味としていました。今回はあえてロック寄りのキャラクターを狙い、パワー感と活き活きとしたダイナミクスを優先した選択としています。SSL-5はシングル・ピックアップらしい煌びやかなトーンを持ちつつしっかりとした中音域があり、ハードクランチでも心地よく応えてくれるピックアップです。定番のTB-4は“JB”の 11ピッチ・モデルで、持ち味のジューシーな中音域と厚みのある倍音が、力強い攻めのドライブサウンドをしっかりと後押しします。

ボディ材バリエーション(3種)

Vintage Candy Apple Red

ボディ材のバリエーションは従来通り3種類を用意しています。ミドルがしっかりとしていてアタック感が心地よいローステッドアルダーのSNAPPER-AL。

Driftwood Burner Natural Satin

軽快な鳴りと音の広がりを持つスワンプアッシュボディのSNAPPER-AS。

See Thru Black

スワンプアッシュボディにフレイムメイプルのトップを組み合わせ、モダンなサウンドキャラクターを加えた“SNAPPER-CTM。

エレクトロニクスなど、ボディマテリアル以外の仕様は3モデルとも共通です。同じ設計でも材の違いによって表情が大きく変わりますので、それぞれのサウンドの差を確認しながら自分のスタイルに合うモデルを選んでいただければと思います。

カラーラインアップ

各モデルのカラーバリエーションについてはモデルページをご参照ください。

https://espguitars.co.jp/products/snapper

ESPオリジナルシリーズではカラーオーダーにも対応しています。自分だけの特別なカラーをご希望の際はお近くのESP製品取扱店までご相談ください。


 

これまでの経験を踏まえ、SNAPPERの歴史を継承しつつ特徴を活かし、「現在のシーンで求められること」と「SNAPPERである理由」を見つめ直しました。それらを突き詰めた結果、ここにひとつの答えとして 2025年仕様のSNAPPERが完成しました。

ここまで長々と開発の背景や仕様を語ってきましたが、最終的に「道具としてユーザーの手と感性に合っているか」という評価は皆様に委ねたいと思います。もし機会がありましたらぜひお手に取っていただき、そのサウンドと弾き心地を体感してみてください。

この楽器があなたの表現を支え、愛機のひとつになり得るものであれば、開発チームとしてこれ以上の喜びはありません。 SNAPPERが皆様の音楽のそばに自然に寄り添える存在になれれば嬉しく思います。

(SNAPPER開発チーム メンバーK)

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