ESP SNAPPER 20th Anniversary Special Vol.6

2024/03/21

2003年12月のリリースより、ESP SNAPPER(スナッパー)シリーズは2023年で20周年を迎えることができました。おかげさまで皆様にご好評いただき、SNAPPERの満20周年Special Yearとなりました。
これから2024年にかけて、様々な企画やキャンペーンを計画しております!
こちらでは開発が始まった当時を振り返りながら製品開発時の秘話やこの仕様に至った経緯など、ちょっと別の角度からSNAPPERを深掘りしていきたいと思います。
随時更新していきますので乞うご期待ください!

[ 開発チームメンバーによるSNAPPER回顧録 ]

第一章 – 開発秘話&ヒストリー

-6- 【ディティール】

SNAPPER開発チームには本当にいろいろなスタッフが携わりました。決して大げさではなく、ESP社内、社外のあらゆる知識と経験が駆り出されました。
設計のエキスパート、熟練のクラフトマン達、パーツ設計の専門チーム、加えてカスタムギターフリークやヴィンテージギターの博識などショップスタッフの面々。
そして実用的な部分を選択する際に大きな参考になったプロミュージシャンの皆様の経験談などなど。
STスタイルをDNAに持つ楽器として、それらのギターを好むプレイヤーをきちんと理解し、彼らが「グッとくる」楽器であるかという事を常に大切に開発を進めていきました。

余談になりますが、ESP SNAPPERはヴィンテージ系こそ狙っていないとはいえ、STスタイルを基本設計にもつギターである事は間違いのないところです。開発の最中に色々感じた事がありました。
STスタイルを起点として持ちながらも、「より良いものを!」「より正確に!」という気持ちで開発に向き合っていると、そのつもりは無くともつい行き過ぎてしまい、いつしかST否定に向かってしまいそうになる事があります。ある部分は新たな解釈で研ぎ澄まし、ある部分は普遍性を大事にレイドバックさせ、バランスを大切に設計していきました。

NEWスタンダードを目指しながらも、STリスペクトを忘れないという軸足を残したのもSNAPPERのバランスを語るうえで外せない大切なポイントかもしれません。

さて、ここまでに新しいヘッド角度の解釈、新型ブリッジやピックアップの開発、ボディシェイプの試作など、様々なトライを繰り返してきました。SNAPPERの開発もいよいよ大詰めです。

とはいえ、まだまだ検討事項は残されています。ナットの素材のチョイスは?グリップシェイプやフレットのサイズは?指版のラディアスは?コントロールの機能や位置は?などなど。
この選択を間違えては調和が生まれません。我々の目指すフィーリングを具現化すべく、引き続き各ディティールを深く深く追い込んでいきました。

[ナット]

ナットには敢えてオーソドックスな牛骨を採用することにしました。トレモロ搭載ということもあり、グラフテックなどの摩擦係数の低い、弦の滑りが良いナット材も魅力的で、もちろん候補に上がりました。最終的には滑りと強度のバランス、そしてトラディショナルなサウンドを優先し、牛骨をチョイスしました。

[フレット]

初代SNAPPERは#216Aというタイプが採用されました。いわゆるジャンボフレットと同等の太さがありながら頂点部分がやや細く尖っている(フレットの断面で見ると三角形型の)フレットです。太いフレットらしいスライドのスムースさと、弦を点で接地させることで生まれる正確なピッチを両立させた選択でした。

[指板R]

指板Rにはコンパウンドラディアスが採用されました。ローフレット側が240Rで始まり、ハイフレット側にかけて305Rと緩くなっていく円錐形です。弦はナットからブリッジに向かって広がっていきますが、円錐形にする事でハイポジションでも弦が指板から離れていかず弦高を低く保つ事ができます。ハイポジションにおけるフラット気味の指板は、特にチョーキング時の音詰まりが軽減されるのも重要なポイントです。

[グリップシェイプ]

ネックグリップのシェイプには新たに「U to V」というシェイプを開発しました。開発に携わってくれたミュージシャンのプレイを検証したところ、ローフレット近辺はシェイクハンドで握りこみ、ハイポポジションに行くにつれてクラシックスタイルで演奏するプレイヤーが多いように感じました。ローポジションは握りこみやすいUシェイプ、ハイポジションは少し頂点を感じ親指が安定する穏やかなVシェイプ、この2種類のシェイプを組み合わせ、それを自然に変化させることでよりプレイアビリティの高いグリップシェイプを完成させました。

[ホイールナット]

STスタイルのギターは、ネックエンド部分にトラスロッド調整用のナットが仕込まれる事が多く、通常であれば調整のたびにネックを取り外す必要があります。木材で作られているネックは湿度に対して非常に繊細で、当日の天気やライブ会場のコンディションなどで急にネックが反ってしまう事もあります。何とか現場で手間を掛けずに調整できればという意見は非常に多くあがっていましたので、ネックを外さずに反り調整が出来るようにホイールナットを採用しました。3mmの金属棒(六角レンチなど)をホイールの穴に差し込むことで回すことができるように設計されていて、ネックを着脱せずとも簡単にネック調整が可能になりました。
ちなみに、ESPブランドで採用しているトラスロッドが順反りと逆反りの両方に対応するバイフレックス・トラスロッドだったからこそ、大きな加工をせずともホイールナット仕様に変更する事ができたのです。

[コントロール]

・ボリュームとトーン
多くのミュージシャンが慣れ親しんだSTスタイルの「マスターボリュームとミドル&ネックピックアップトーン」の3ノブでいいのでは、という意見も多かったのですが、クイックなコントロールを目的とし、STスタイルで改造依頼の多かった「マスターボリュームとマスタートーン」の2ノブ構成を採用する事にしました。ボリュームにはハイパスフィルターを搭載し、ボリュームを絞った時でも歯切れの良いサウンドが得られます。リズムギターを弾くのに大変重宝され、当時多くのスタジオミュージシャンが採用していた機能です。

・ミニスイッチ
2003年の発売当時、ミニスイッチは「ブリッジピックアップのダイレクトスイッチ」でした。(ちなみにスイッチが効いている状態(ブリッジピックアップダイレクト時)でもボリュームが機能する配線になっていた。)これも当時に改造依頼が非常に多かった機能です。ピックアップセレクターでプリセットしたバッキングモードから瞬時にハムバッカーに切り替えるイメージです。特にハーフポジションを多用する場合などはハムバッカーから戻す時に気をつかう事なく操作できます。

・ピックアップセレクター
SSHのピックアップ構成に5wayピックアップセレクターの組み合わせです。ブリッジ側のハーフトーンはミドルピックアップとブリッジピックアップのスプリットの組み合わせになります。今でも度々質問されたりするのですが、SNAPPERはレバースイッチの向きに特徴があります。ピックガードの外周に沿った向きに配置されていて、一般的なSTのレバースイッチよりも横に寝ています。従来の角度の方がピッキングの向きに合っていて切り替え易いように思いますが、うっかり手が当たって切り替えてしまう誤作動も多く報告されます。そこであえて一番切り替え易い向きにせず、わざとほんの少しだけ切り替えづらい向きにしました。ミュージシャンのチェックでは触り初めに違和感を指摘される方もいらっしゃいましたが、皆さんすぐに慣れてしまい、誤作動が起こりづらく安心して弾けると大変好評でした。デザイン的にも外周にきれいに沿っていて美しいのではないかと思っています。

※本記事では、2003年発売のSNAPPER ファースト モデルの構造を解説しています。

(SNAPPER開発チーム メンバーK)

– つづく –

【合わせて読みたい】
◆ ESP SNAPPER-7 開発秘話

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