「創作の翼」特別企画
トップクリエイター対談
ESP湯澤×イラストレーターRella

コストやスケジュール含め制約が一切ない
血が沸き立つような
創作の羽根ギター製作プロジェクト



━━ さて、今回は16周年のキービジュアルを元にギターを作るというプロジェクトなのですが、いつから始まったプロジェクトなのでしょうか。


下川(ESP創作の翼プロジェクト統括責任者):
今回の「創作の翼プロジェクト」は、2年ほど前にクリプトンさんからお話を頂いたものになります。

弊社は初音ミクさんとの関わりはもう少し前からありまして、2020年にミクさんとエンドースメント契約を結ばせて頂いており、その1号機のシグネチャーモデルとして、「STREAM-Miku-Custom」を発売しています。1号機は、初音ミクさんが実際に2020年のマジカルミライで演奏されていますが、これはその実機です。

初音ミクさんというひとりのアーティスト様のギターなので、このギターは基本的にESPの人間でさえ、基本的に誰にも触らせていません。アーティスト様のギターというのは普通、アーティストさん本人しか触れないものですから。それから色々なギターをリリースさせていただきまして、iXimaさんデザインの「STREAM-Miku-Custom -Hatsune Miku 15th ANNIVERSARY Limited Edition-」、雪ミク調デザインの「E-STREAM-Miku-Custom -SNOW MIKU Edition-」、またアコースティックギターの「G-AC-Miku」も販売しました。

そういう繋がりが既にあって、初音ミク16周年企画の際にRellaさんが描かれた創作の羽根をギターの形にしてみないかという提案を、クリプトンさんから頂いたんです。

最初は難易度の高さを感じたというか、我々も身構えてしまったんですが、こんな素晴らしいお声がけをしていただけるというのはESPとしてありがたい話だし、逆に言うとカスタムギターで日本一を誇るESPでなければこのギターは作れないだろうとも思いました。


━━ Rellaさんは創作の羽根をギター化するという提案をされた時、どう思いましたか?


Rella:
私の元の設定上、翼のパーツは全部バラバラで浮いている状態だったので、シンプルに想像がつかなくて。でも、翼にはミクの曲を作る楽器のモチーフも多数入れていたので、それがまたギターになるというのはとても尊いことだと思って、「できるのであればぜひご相談したい」とお返事させていただきました。

湯澤:
翼のパーツが浮いている訳なので、今回このデザインを再現するにあたって、やはり単なるレリーフではなく、浮いている様に見せるということにはとても気を遣いましたね。
そういう事情もあって、個々のパーツをバラバラに作る設計にしたんです。
普段ギターを作るときはここまで細かくパーツ分けはしないので、細かいパーツを一個一個作っていく過程はとても新鮮で、楽しかったですね。


━━ 湯澤さんは今回のプロジェクトの話をされて、最初どう感じましたか?


湯澤:
一言でいうと血が湧き立ちましたね。
普通、楽器メーカーとか、あるいは僕とかがこれを企画したら、絶対に通らないんですよ。「そもそもそんなもの作れるのか」って、そんな話になってしまいます。

けれども、ここがESPの凄い所で、カスタムギターだからこの話が通ったんです。カスタムギターというのはつまり、お客様の要望。これに応えないわけにはいかないですよね。

普通のギター製作では、コストやスケジュール含め制約が沢山あるわけですが、今回はそういった制約が一切ない。今までであれば気持ちを抑えなければならないところが、今回はもう、抑える必要が全くなかったんです。

会社からも「当分の間これだけに集中してくれ」って言われて。
本当に楽しい経験でした。


━━ ESPさんが使う「カスタムギター」という言葉には特別な響きがありますよね。


下川:
会社のスタートがそもそも「お客様のどんな要望にも応えてカスタムギターを作る」という点にありますからね。
ESPの設立当初は既製品を大量生産して大量に売るという会社ではなかったんですよ。なので今回のプロジェクトは特に会社のスピリットと合致しており、社内も盛り上がりました。


━━ 改めて、Rellaさんから創作の羽根に込めたデザインの意図、注目ポイントをお聞かせいただけますか?


Rella:
「今まで初音ミクを形作ってきたツールを詰め込んだ」というコンセプトなのですが、サウンドの羽根の方は、特にミクと関わりの深い楽器を用いて構成しています。
創作の羽根に描かれているギターは実はESPさんのギターなんですよ。
バイオリンに関しては、「初音ミクシンフォニー2017」の「未来序曲」のMVで起用されていたオリジナルデザインです。そしてシンセサイザーは、初音ミクのデザインのモチーフにもなっているヤマハの「DX7」です。