モデルヒストリー ~FOREST~

現在ESPを代表するモデルの一つに成長したFORESTシリーズ。ESPの持てる木工技術の全てを注ぎ込んだ、個性的でオリジナリティ溢れる美麗なボディシェイプはまるで芸術品のような気品と風格を漂わせています。今や国内外問わずあらゆるシーンで活躍するFORESTシリーズは一体どのようにして誕生したのでしょうか。

1990年代前半、ESPオリジナルのベースラインアップと言えばニューヨークシリーズのHORIZON BASSくらいでした。ベースのラインアップをもっと充実させたい、そんな想いを抱いていた製造部門から新しいベースの企画が持ち上がりました。楽器ショー(楽器フェアやNAMM)で発表する事を視野に入れて企画はスタート。となると既存のボディシェイプではインパクトが無い。まったく新しいデザインを試行錯誤していた結果、一つのボディシェイプが誕生します。それは、伝統的なダブルカッタウェイを持ちながら、幾つもの曲線が組み合わさったものでした。ボディエッジ部分には体へのフィット感も考慮してベベルドカットが採用され、何よりプレイヤビリティの面でも遜色のない、素晴らしいものになったのです。


1992年のカタログに始めて登場したFOREST。現在のイメージとは多少違うかもしれませんが、当時はかなり渋いイメージでした。そのオリジナリティ溢れるボディシェイプや、オイルフィニッシュで仕上げられたウッディーな質感など、深い森の木々を連想させることからFORESTと言うモデル名に決定しました。新機種としては珍しく、4弦、5弦、6弦がラインアップされました。この事からもFORESTに対する期待度が分かります。


ネックにはパドゥクを主体として、メイプルやマホガニーをラミネートした9ピース仕様が採用されました。ボディにはブビンガやパドゥクと言った、密度が高く比重の重い木材を採用しています。指板材はウェンジでした。主構成材にエキゾティックウッドを採用すると言うかなり実験的な要素も含まれていたベースでした。


ESPのベースには珍しくスルーネック構造を採用しています。通常、スルーネック構造ではネック材がボディ中央を構成しているので、ボディトップ&バックにネック材が露出していますが、FORESTではボディトップにネック材を露出させない方法を採用していました。この方法はHORIZON-CTMでも採用されており、一見するとスルーネックには見えないものです。
通常ネック材にボディ部分となるウイング材を接着し、その上にボディトップを全て覆い尽くすようにトップ材を接着します。HORIZON-CTMはこの方法です。しかし、初期FORESTはトップ材とバック(ウイング)材が同一材、つまり単板なのです。そこで、ボディ材のバックからネック材の収まる部分だけを削り取り、そこにネック材を接着すると言う非常に精度の要求される、更には手の込んだ方法がとられています。
他にも、ハードパーツには当時開発されたばかりのBB-Iブリッジを搭載し、ピックアップとアクティブ回路にEMGを採用するなど、あらゆる面で新しい事に挑戦したベースだったのです。

そんなFORESTですが、発売当初は特殊な木材構成や独特なボディシェイプから、いまひとつ人気が低迷していました。どんなに優れているモデルでも最初はそんなものです。しかし、1994年にL’Arc~en~Cielのtetsuya氏がFORESTを使用するとその人気は爆発。後に市販モデルのマテリアル、ピックアップを変更しヘッドをリバース仕様にしたtetsuya氏初のシグネチュアモデルとして発売されたTFR-1は瞬く間に大人気モデルとなりました。


1997年頃、マイナーチェンジしたFORESTはFOREST-STDとFOREST-CTMの2種類のラインアップになります。FOREST-STDはアッシュボディ、ハードメイプル3ピースネックにエボニー指板と言う仕様。FOREST-CTMはフィギュアドメイプルとアッシュのラミネートボディ、FOREST-STDと同じくをハードメイプル3ピースネックにエボニー指板と言う仕様です。どちらもデタッチャブル構造で、セイモアダンカンピックアップのSJB-1とSPB-1のPJ配列、ESP CI-R-02アクティブ回路を内蔵していました。より使い勝手の良い仕様へとマイナーチェンジした結果、更にユーザーの裾野が広がって行ったのです。


2001年、ピックアップ配列がPJタイプからJJタイプに変更されます。FOREST-STDはセイモアダンカンのSJB-1のセット、FOREST-CTMは同じくセイモアダンカンのカスタムショップ製ピックアップのセットが採用されます。


2003年、FOREST-STDのボディ材がアッシュからアルダーに変更され、ソリッドカラーのみのラインアップとなります。FOREST-CTMはトップ材がキルテッドメイプルから、初期モデルを彷彿とさせるブビンガ、コア、スポルテッドメイプルの3種類に変更されます。また、デタッチャブル構造から、ハードメイプルにウォルナットを挟んだ5ピースネック材を使ったスルーネック構造になりました。しかし、2008年、このモデルを最後にFOREST-CTMは生産終了となってしまいました。


2010年現在、FOREST-STDはESPカスタムラボピックアップ、アクティブ回路はESPシナモンと言う仕様で生産を続けています。2009年には約20年振りに5弦モデルもラインアップに加わりました。

当初ベースのモデルとしてスタートしたFORESTですが、その独特なボディシェイプは予想以上に反響が大きく、このシェイプのギターが欲しい!とユーザーがオーダーメイドで製作するようになります。当時結成間もないPIERROTのギタリストで、現LM.Cのアイジ氏もそんなユーザーの一人だったのです。


反響の大きさを受けて、1997年頃にギター版であるFOREST-Gを発売します。当時はフロントにシングルコイルサイズハムバッカー、リアにフルサイズハムバッカー、ブリッジにはフロイドローズを搭載した仕様でした。また、2001年の楽器フェアにおいて、FOREST-Gのボディシェイプを持つFOREST-LTDを50本限定で発売します。フロントにサスティナーを搭載したモデルで、当時かなり話題を呼びました。その後、2006年にはFOREST-Gが2ハムバッカー、チューンマティックブリッジ仕様で復活しますが、2009年に残念ながら再度生産終了となります。
また、途中FOREST-Gは、2000年頃によりスマートでシャープなルックスのFOREST-GTへと進化を遂げます。FOREST-GTは、現在もラインアップに加わっている大人気モデルです。

■FOREST-STD Series
■FOREST-GT

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モデルヒストリー ~JANGO~

主にリペアやカスタマイズ業務を行うショップとして1975年に誕生したESP。ショップにはその噂を耳にした多くのミュージシャンが連日訪れて賑わっていました。ある時、ギタリスト達から「ギターは作らないの?」と言われるように。ユーザーのニーズに応える。創業時に掲げられたポリシーの元、Navigatorブランドを立ち上げ、当時品質の低下が囁かれていた有名メーカーのレプリカモデルを発売します。抜群に高いクオリティは、瞬く間に業界内で話題となり愛用者が増えて行きました。すると次に求められたのは「オリジナルモデル」でした。そして誕生したのがESP初のオリジナルモデルTORROCCOとJANGOです。1978年頃の事です。特にJANGOは個体や資料などもほぼ残っておらず、その実態は謎に包まれている幻のモデルなのです。

唯一無二のオリジナルシェイプを持つJANGO。現在でも決して遜色ないそのルックスには風格さえ漂います。カタログには一切登場せず、決まった仕様も無かったJANGO。オリジナルモデルとしていますが、当時を知る数少ない関係者によると、試作の域を脱しないモデルだったとも言われていますが真相はいかに…。

さて、まずはシンコーミュージック刊ジャパン・ヴィンテージVol.5に掲載された2本のJANGOをご紹介します。この記事を見た時は衝撃でした。カラーでJANGOが見れるとは思っていませんでしたから。このギターの所有者は、現在ロンドンに在住している富岡秀次氏。ジャパン・ヴィンテージ本誌でも使われた、ご自身撮影の美麗な画像を提供していただきました。


まずはこちら。ここでは便宜上、タイプ1とします。
ボディはハードメイプルトップでマホガニーバックのラミネートで、ネックはマホガニー、指板はローズウッドです。JANGOのコンセプトの一つが「LP系サウンドに飽き足らない人のために」とあり、このタイプ1の仕様はまさにLP系サウンドを意識したものとなっています。ローズウッド製のエスカッションやコントロールノブ、バック材と同じ木材で作られたコントロールキャビティパネルなど、至る所に手の込んだ仕様が見受けられます。また、ボディトップはエッジ部分がかなり盛り上がった特徴のあるアーチ加工で、ボディバックに至ってはエッジ部分が盛り上がっており、まるでお盆のようなルックス。高度な木工加工技術が無ければできない加工です。ピックアップなどは恐らく国産のものが使われていると思います。


続いてこちら。タイプ2です。
ボディは2ピースシベリアンアッシュトップで1ピースシベリアンアッシュバック、ネックはハードメイプル、指板はローズウッドです。使用木材こそ違いますが、基本的にはタイプ1と同じ構造です。こちらもエスカッションなどがローズウッドで製作されています。(センターピックアップは所有者の富岡氏が購入直後に増設したそうです。)


他にもいくつか写真でその存在が確認できます。白黒なのが残念です。
ラージハムバッカーの方は富岡氏所有のタイプ2同じくシベリアンアッシュが使われている個体です。タイプ2とは木目が異なるので、別の個体であるのが分かります。タイプ2の仕様は最低でも2本存在していた事になりますね。
ミニハムバッカーが搭載されたものはコントロール位置が他の3本とは異なり、かなりボディエンド側に寄っています。また、指板にはブロックインレイが入れられています。画像からは分かり辛いですが、恐らくボディはハードメイプルトップだと推測されます。

世界にいったい何本存在するのでしょうか。もしかしたら富岡氏所有の2本だけかもしれません。
いやいや、JANGO持ってるよ!と言う方、いらっしゃいましたら是非ご連絡ください。

Special Thanks!!
フォトグラファー&ミュージック・ジャーナリスト 富岡秀次 / Shu Tomioka

タグ:JANGO

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モデルヒストリー ~M-II~

HORIZONと並んでESPを代表するモデルであるM-IIシリーズは、トラディショナルなSTをスタイリッシュにアレンジしたディンキースタイルのギターです。M-IIの前身モデルであるMIRAGEが発売された1980年代中頃は、テクニカルなプレイを得意とするギタリストが多く出現し、またハードロックやへヴィメタルと言った音楽が世間を圧巻しており、スタイルに合った新しいギターを探していた多くのギタリストの中で話題となり愛用されました。メタリカのカークハメットモデルのKH-2や、スレイヤーのジェフハンネマンモデルなどは、このモデルを元に開発されました。

THE MIRAGEが登場したのは、HORIZONと同じく1984年の海外向けカタログでした。

このカタログに掲載されているのは、まだSTモデルを基本としたカスタムモデルで、指板やピックアップの違いによりスタンダード、デラックス、スペシャル、カスタムの4機種がラインアップされています。ブリッジにはFLICKER-IIが搭載されていました。また、この時採用されていた新しいヘッドストックは、通称ニューヨークヘッドと呼ばれ、以後さまざまなモデルに採用されることとなるオリジナルです。


1986年のNAMMで発表された新しいMIRAGEは、ボディシェイプがディンキースタイルにリファインされ、22フレットでボルトオン仕様、ピックアップがSHレイアウトのデラックス、24フレットでスルーネック仕様、ピックアップがSSHレイアウトのカスタムと2機種がラインアップされました。ブリッジにはロック式のESPシンクレアトレモロが標準装備されるなど、かなりハードロックやへヴィメタルに特化したギターへと変貌して行ったのです。


そして、以前スタンダードと呼ばれていた1ハムバッカーのモデルはM-I(「M」はMIRAGEの頭文字。MIRAGEの1ピックアップなのでM-I)とモデル名を変えて、スタンダード(STシェイプ)、デラックス(STシェイプ:なぜかピックアップはSSH配列)、カスタム(ディンキースタイル)の3機種がラインアップされました。余談ですが、この時代は某ギタリストの影響で1ハムバッカーのギターが大人気だったのです。

1987年にはHORIZONと同様にニューヨークシリーズの一機種として日本でも発売が開始されます。当時のカタログを見ると、MIRAGEのデラックスとカスタム、M-Iカスタムがラインアップされていました。


1989年頃には、メイプル指板のMIRAGEデラックスIIやM-IIIなどのバリエーションモデルも発売されますが、どれもその後の統廃合に伴い短期間で姿を消します。

1993年頃、ピックアップがSHレイアウトに変更されたカスタムがモデル名をMIRAGE M-IIに変更します(M-IIのモデルネーム自体は90年頃にUSAで既に使用。現在のM-IIデラックスの22フレット仕様のようなモデル)。ヘッドストックにも現在と同じナイフヘッドが採用されます。1997年頃には、デラックスが24フレットにマイナーチェンジを行い、モデル名がM-IIデラックスになります。同時にMIRAGE M-IIもM-IIカスタムと名称変更されました。ここでMIRAGEがモデル名から姿を消します。


この時期に海外で発売されていたボディの外周Rが大きいモデル。
このモデルではニューヨークヘッドが採用されています。

2000年にはカスタム、デラックスともにピックアップが2Hレイアウトに変更されます。
以降、コントロール部などに多少の仕様変更を行いながら現在に至ります。

プレイヤビリティも抜群で、無限のポテンシャルを秘めるM-IIシリーズ。
楽器店などで見かけたら是非手にとって、弾いてみてください。
あたりまえが素晴らしいのだと認識させてくれるギターですから。

ちなみに、M-Iは1987年のカタログに登場しただけで以降ラインアップから姿を消しています。
現在では輸出モデルの一機種としてラインアップされています。
また、その魂は後にJERKを誕生させる事になりました。

■M-II Series

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モデルヒストリー ~HORIZON~

1980年代中頃はアメリカやヨーロッパ、そして日本でもハードロックが人気の時代でした。音楽がハードになれば衣装やギターにもハードなものが求められます。しかし、それまでのギターと言えばいわゆるトラディショナルなギターばかりでカラーも地味。ギタリスト達が求めるギターとは若干違うものでした。そこで当時新進気鋭の各社(K社、C社、J社など)は、よりスタイリッシュで音楽性に合ったルックスのギターを次々と発売します。時代に呼応するように誕生した様々なギターは瞬く間に人気となり、多くのギタリストに愛用されるようになりました。
もちろん我々ESPも敏感に反応し、ギタリストの要求に応えられるギターを開発、販売を開始します。当時ニューヨークにオフィスがあったESP USA企画のギターの数々は日本国内ではニューヨークシリーズとして発売されました。その中の1機種が今でもフラッグシップとしてラインアップされているHORIZONです。当時としては珍しいSTシェイプにアーチドトップ、そしてスルーネック構造のギターは様々なジャンルのギタリストに人気を得ました。

始めて登場したのが1984年の海外向けカタログ。

現在のスタイルとは全然違いますね。
3シングルピックアップにFLICKER-IIトレモロ搭載と、STスタイル基本のカスタムモデルでした。

国内向けのカタログに初めて登場したのは1987年。

この時点で現在と同じアーチドトップ、スルーネック構造に変更。現在までに受け継がれている基本コンセプトは完成されています。ブリッジには当時発売されていたロック式のESPシンクレアトレモロを搭載しています。当時KISSのブルースキューリックなど多くのギタリストが愛用した事でHORIZONの知名度は一気に高まりました。

こちらは1989年のカタログから。

指板インレイに注目!これは希少です。

1998年に登場したHORIZON CLASSICシリーズ。CTMとIIの2機種がありました。

メイプルトップ(IIはアッシュ)、マホガニーバックのボディは5ミリ厚くなっています。ネックはマホガニー、指板はローズウッドでスケールは628ミリ。ジョイント方式はセットネックを採用しています。ブリッジはチューンマティックタイプとストップテイルピースのコンビネーション。
・・・そう、このCLASSICシリーズはLPタイプのサウンドを狙って開発されたモデルなのです。
2000年頃にマイナーチェンジを行い、24フレット仕様となりましたが、その後残念ながら生産を終了してしまいました。
しかし、ここで生まれた基本コンセプトはその後に登場するPOTBELLYに受け継がれているのです。


現在のラインアップは画像上からCTM、I、II-NT、IIIです。
CTMは、トップ材に5Aクラスのキルテッドメイプルが使われているシリーズの最高峰モデル。
Iは、アルダーボディ、フロントにシングルコイルサイズハムバッカーを搭載しているスタンダードタイプ。
II-NTは、マホガニーボディ、ブリッジにティーンマティックタイプを採用したモデル。
IIIは、アルダーボディにオフセットボディを持つモデル。
自分のスタイルに合わせて選択できるように仕様違いで4機種がラインアップされています。
他、詳しいスペックなどは各モデルのページをご覧下さい。

最後にヘッドストックのお話。
現在のHORIZONシリーズには2種類のヘッドストックが使用されています。
IやII-NTに使用されているものは通称ナイフヘッドと呼ばれているペグが片側に配列されているもので、今やESPを代表するヘッドストックになっています。そしてCTMやIIIに使われているペグが3:3のヘッドストックは、今でこそHORIZONヘッドと呼ばれていますが、元々は同時期に発売されていたJoy Stickベースに採用されていたヘッドストックなのです。となるとJSヘッドが正式名称なのかな?・・・その後、Joy Stickベースがマイナーチェンジを行いHORIZONベースが誕生、そしてHORIZON-CTMが発表されるとこのヘッドストックが使用されるようになりました。これが1992年頃です。Joy StickベースやHORIZONベースについてはまた今度・・・

ゆるぎない自信と確かな技術の結晶・・・そんなギターがHORIZONシリーズなのです。

■HORIZON Series

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