モデルヒストリー ~HORIZON~

2010/03/04

1980年代中頃はアメリカやヨーロッパ、そして日本でもハードロックが人気の時代でした。音楽がハードになれば衣装やギターにもハードなものが求められます。しかし、それまでのギターと言えばいわゆるトラディショナルなギターばかりでカラーも地味。ギタリスト達が求めるギターとは若干違うものでした。そこで当時新進気鋭の各社は、よりスタイリッシュで音楽性に合ったルックスのギターを次々と発売します。時代に呼応するように誕生した様々なギターは瞬く間に人気となり、多くのギタリストに愛用されるようになりました。
もちろん我々ESPも敏感に反応し、ギタリストの要求に応えられるギターを開発、販売を開始します。当時ニューヨークにオフィスがあったESP USA企画のギターの数々は日本国内ではNEW YORK SERIESとして発売されました。その中の1機種が今でもフラッグシップとしてラインアップされているHORIZONです。当時としては珍しいSTシェイプにアーチドトップ、そしてスルーネック構造のギターは様々なジャンルのギタリストに人気を得ました。

始めて登場したのが1984年の海外向けカタログ。
現在のスタイルとは全然違いますね。
ボディエッジ部も大きなRではなく、バインディングが巻いてあるように見えます。3シングルピックアップにFLICKER-IIトレモロ搭載と、STスタイル基本のカスタムモデルでした。

国内向けのカタログに初めて登場したのは1987年。NEW YORK SERIESの中の1モデルとして登場。
この時点で現在と同じアーチドトップ、スルーネック構造に変更。現在までに受け継がれている基本コンセプトは完成されています。ブリッジには当時発売されていたロック式のESPシンクレアトレモロを搭載しています。当時KISSのブルースキューリックなど多くのギタリストが愛用した事でHORIZONの知名度は一気に高まりました。

スルーネックでありながら、トップにはスルーネック材が見えていません。その正体は凝った構造に見られます。ウイング材とスルーネック材を接着後に蓋をするようにトップ材をラミネートしているからなのです。
こちらは1989年のカタログから。指板インレイに注目!これは希少です。

1992年のカタログにはHORIZON-CUSTOMの名称で登場。ラインアップとして初めてキルテッドメイプルやフレイムドメイプルをトップ材に用いたモデルも加わります。

1993年のカタログには更にラインアップが追加されます。HORIZON-CUSTOMとして発売されていたモデルをHORIZON-Iに名称変更、新たにトップ材にアッシュ採用したHORIZON-II、そしてトップ材にキルテッドメイプルやフレイムドメイプルを採用しているモデルをHORIZON CUSTOMとして、シリーズ名もCALIFORNIA SERIESとなりました。

ここで指板のインレイも6弦側に寄ったブロックポジションと12フレットにはESP文字入りのブロックになりました。ヘッド形状もこれまでの片側6連に加え、3:3両連のものが採用されました。

1998年に登場したHORIZON CLASSICシリーズ。CTMとIIの2機種がありました。
メイプルトップ(IIはアッシュ)、マホガニーバックのボディは5ミリ厚くなっています。ネックはマホガニー、指板はローズウッドでスケールは628ミリ。ジョイント方式はセットネックを採用しています。ブリッジはチューンマティックタイプとストップテイルピースのコンビネーション。
・・・そう、このCLASSICシリーズはLPタイプのサウンドを狙って開発されたモデルなのです。この基本コンセプトはその後に登場するPOTBELLYに受け継がれているのです。

2000年のカタログでのラインアップはこちら。

画像の上から、CTM(CUSTOM)、I、II、III、CLASSIC、II CLASSICです。
HORIZON-BASSの流れを汲むオフセットボディシェイプを採用したHORIZON-IIIがこのカタログよりラインアップに加わりました。偏光性塗料のイリュージョンカラーが採用されるなど、新しいHORIZONの形となりました。HORIZON CLASSICシリーズは24フレットへと仕様変更されました。

2002年には3シングル仕様のHORIZON-I 3S、サスティナーシステムを搭載したHORIZON-I Sと、HORIZON-Iのバリエーションモデルがラインアップに加わりました。また、ヘッドシェイプもナイフヘッド(ポインテッド)に刷新されています。
2005年7月にHORIZON-IIが仕様変更して HORIZON-II NTとして再登場します。これまでマホガニーウイング&アッシュトップだった材構成がマホガニーのみになり、ブリッジもフロイドローズからチューンマティック&ストップテールピースに変更されました。

2010年のラインアップは画像上からCTM、I、II-NT、IIIです。CTMは、トップ材に5Aクラスのキルテッドメイプルが使われているシリーズの最高峰モデル。
Iは、アルダーボディ、フロントにシングルコイルサイズハムバッカーを搭載しているスタンダードタイプ。
II-NTは、マホガニーボディ、ブリッジにティーンマティックタイプを採用したモデル。
IIIは、アルダーボディにオフセットボディを持つモデル。
自分のスタイルに合わせて選択できるように仕様違いで4機種がラインアップされました。

2012年、いくつかの仕様変更が実施されました。HORIZON-CTMはスルーネック構造からセットネック構造に変更され、コントロール位置の見直しを行い、間隔が広く配置されました(後にIとII NTも同仕様に変更)。ポジションマークがオフセットブロックから2本のラインが低音弦側に入れられているダブルストライプになりました(この時点でIIIはオフセットブロック)。
2016年にはHORIZON-CTMのトップ材をプレーンハードメイプルに変更したHORIZON-PTが発売。定番のブラックと、専用カラーとなる宝石をイメージした4カラーを採用しました。
最後にヘッドストックのお話。
現在のHORIZONシリーズには2種類のヘッドストックが使用されています。
IやII-NTに使用されているものは通称ナイフヘッドと呼ばれているペグが片側に配列されているもので、今やESPを代表するヘッドストックになっています。そしてCTMやIIIに使われているペグが3:3のヘッドストックは、今でこそHORIZONヘッドと呼ばれていますが、元々は同時期に発売されていたJoy Stickベースに採用されていたヘッドストックなのです。となるとJSヘッドが正式名称なのかな?・・・その後、Joy Stickベースがマイナーチェンジを行いHORIZONベースが誕生、そしてHORIZON-CTMが発表されるとこのヘッドストックが使用されるようになりました。これが1992年頃です。Joy StickベースやHORIZONベースについてはまた今度・・・

ゆるぎない自信と確かな技術の結晶・・・そんなギターがHORIZONシリーズなのです。

※2022年現在のラインアップは下記リンクからご確認ください。

■HORIZON Series

※2022年8月30日 修正&加筆

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